首都高速の渋谷出口で降りて、ドールキッズ社の入った神宮前の雑居ビルに着くと、そこは黒山の人だかりだった。明治通りから一本、脇道にそれ、裏口の地下ガレージ入り口に回ってみるが、そこも警備員で固められている。
入り口で警備員に制止されたが、そういえば俺は、ポーラの苗字すら知らない。
広部の名前を告げると、内線電話で確認してくれたが、不在とのことだった。携帯電話の番号も訊いたことがなかった。
警備員と押し問答していると、見かけの年齢差が、親子のような、広部と狩田が一緒に並んで帰って来たので、ビルの中に入ることが出来た。
エレベーターでドールキッズ社のフロアに上がる間、簡単にこの騒ぎの原因は、ピーチバレーズがブレイクしたからだと聞かされた。
会社の経営も軌道に乗り始め、手狭になったので、雑居ビルのもう一フロアを借りて、七階と八階の両方に拡張したらしい。
七階に上がると、改装されたレッスンスタジオのガラスで出来た扉の向こうに、ポーラが居た。メンバーの女の子たちが踊りを練習しているのを腕組みしながら見守っている。
スタジオの外で、俺はまたしても安堵の気持ちで腰が抜け、へたり込んだ。
「良かった。ポーラは消えてなかった。本当に良かった……」
レッスンスタジオの壁に貼られたミラーで、俺のことに気づいたのか、ポーラがこっちに歩み寄って来た。ガラスで出来たドアを勢いよく開けると、
バッシーン! またしてもいきなりの頬ビンタ。
床に座っていた俺は、「よよ」と、床に倒れこんだ。
「今までいったいどこいってたのよ! 行くなら行くって、ひとこと言ってから行ってよねっ!」
ガラスドアが「バタンッ!」と閉まったと思ったら、また開いた。
「今日の夕食はあんたが作ってよねっ! このアホたん!」
さっきより激しくドアが閉まった。
俺の頭はますます混乱する。
「じゃあポーラは、やっぱり、あかの他人なんだろうか? 俺の姪ってことにはならないのだろうか? 爺さんの話はデタラメだったのか?」
俺はその日からまた、前と同じように、食事係兼、雑用を受け持った。外出禁止令が出されたメンバーは、もう籠の鳥状態で、近所のコンビニすら行けなくなっていた。
入り口で警備員に制止されたが、そういえば俺は、ポーラの苗字すら知らない。
広部の名前を告げると、内線電話で確認してくれたが、不在とのことだった。携帯電話の番号も訊いたことがなかった。
警備員と押し問答していると、見かけの年齢差が、親子のような、広部と狩田が一緒に並んで帰って来たので、ビルの中に入ることが出来た。
エレベーターでドールキッズ社のフロアに上がる間、簡単にこの騒ぎの原因は、ピーチバレーズがブレイクしたからだと聞かされた。
会社の経営も軌道に乗り始め、手狭になったので、雑居ビルのもう一フロアを借りて、七階と八階の両方に拡張したらしい。
七階に上がると、改装されたレッスンスタジオのガラスで出来た扉の向こうに、ポーラが居た。メンバーの女の子たちが踊りを練習しているのを腕組みしながら見守っている。
スタジオの外で、俺はまたしても安堵の気持ちで腰が抜け、へたり込んだ。
「良かった。ポーラは消えてなかった。本当に良かった……」
レッスンスタジオの壁に貼られたミラーで、俺のことに気づいたのか、ポーラがこっちに歩み寄って来た。ガラスで出来たドアを勢いよく開けると、
バッシーン! またしてもいきなりの頬ビンタ。
床に座っていた俺は、「よよ」と、床に倒れこんだ。
「今までいったいどこいってたのよ! 行くなら行くって、ひとこと言ってから行ってよねっ!」
ガラスドアが「バタンッ!」と閉まったと思ったら、また開いた。
「今日の夕食はあんたが作ってよねっ! このアホたん!」
さっきより激しくドアが閉まった。
俺の頭はますます混乱する。
「じゃあポーラは、やっぱり、あかの他人なんだろうか? 俺の姪ってことにはならないのだろうか? 爺さんの話はデタラメだったのか?」
俺はその日からまた、前と同じように、食事係兼、雑用を受け持った。外出禁止令が出されたメンバーは、もう籠の鳥状態で、近所のコンビニすら行けなくなっていた。
