さっきより、さらに激しくドアが閉まった。
俺は頬ビンタには慣れているが、拍子抜けしたのと、安心したショックで、その場で腰が抜けた。
「ああ、良かった。とにかく間に合って良かった……」
しばらく腰が抜けたまま呆然としていた。しかし、あることに気がついて飛び上がった。
「しまったぁ! てことは、ポーラが消えていなくなるってことじゃないか!」
俺は大慌てで、家の裏手に置いてあった自転車に乗って家を飛び出した。錆だらけのママチャリは、母親のやつだった。
早朝から営業している御殿場インター近くのカーショップで小型バッテリーを買う。
朝の御殿場ラブホテル街は、妙によそよそしい。張りぼての映画のセットみたいだ。
ラブホから出て来る車の助手席に乗った女性は、たいていうつむいている。
俺はそんな車を横目で見ながら、ママチャリを青木ヶ原へと全力で走らせた。
炎が燃えているようなデザインのヘルメットを被った、ロードレーサータイプのサイクル野郎たちをどんどん追い越す。
自転車を樹海の茂みに放り出すと、俺は一目散で走った。
俺の愛車、RAV4の屋根やボンネットの上には落ち葉が降り積もっていた。キーをひねってもうんともすんともいわない。
降り積もった落ち葉を払いのけ、ボンネットを開けて、カーショップで買った小型バッテリー繋ぎ、もう一度キーを捻る。「キュ、キュ、キュ、キュ、キュ」
「頼むっ! かかってくれっ!」
「キュ、キュ、キュ、キュ、キュ、キュ、キュルルルル、ブワンッ!」
「しめたっ! かかったぁ!」
ママチャリを急いで車の後部ハッチにあるスペアタイアに括り付け、御殿場インターから東名高速にのって東京へとひた走った。
車を走らせながらグローブボックスの中を確認すると、入れっ放しにしておいた俺のスマホがそのままだった。シガーソケットにスマホを繋いで充電する。
しかし、ポーラの電話番号もラインのアドレスも聞いてなかったことを思い出す。
未来の世界は、8Gだった。今はまだ、5Gが出回り始めたばかりだ。「8Gと5Gじゃ、番号を知っていても、通信出来るわけないよな」と思いながら助手席のシートにスマホを放り出し、スピードを上げた。
俺は頬ビンタには慣れているが、拍子抜けしたのと、安心したショックで、その場で腰が抜けた。
「ああ、良かった。とにかく間に合って良かった……」
しばらく腰が抜けたまま呆然としていた。しかし、あることに気がついて飛び上がった。
「しまったぁ! てことは、ポーラが消えていなくなるってことじゃないか!」
俺は大慌てで、家の裏手に置いてあった自転車に乗って家を飛び出した。錆だらけのママチャリは、母親のやつだった。
早朝から営業している御殿場インター近くのカーショップで小型バッテリーを買う。
朝の御殿場ラブホテル街は、妙によそよそしい。張りぼての映画のセットみたいだ。
ラブホから出て来る車の助手席に乗った女性は、たいていうつむいている。
俺はそんな車を横目で見ながら、ママチャリを青木ヶ原へと全力で走らせた。
炎が燃えているようなデザインのヘルメットを被った、ロードレーサータイプのサイクル野郎たちをどんどん追い越す。
自転車を樹海の茂みに放り出すと、俺は一目散で走った。
俺の愛車、RAV4の屋根やボンネットの上には落ち葉が降り積もっていた。キーをひねってもうんともすんともいわない。
降り積もった落ち葉を払いのけ、ボンネットを開けて、カーショップで買った小型バッテリー繋ぎ、もう一度キーを捻る。「キュ、キュ、キュ、キュ、キュ」
「頼むっ! かかってくれっ!」
「キュ、キュ、キュ、キュ、キュ、キュ、キュルルルル、ブワンッ!」
「しめたっ! かかったぁ!」
ママチャリを急いで車の後部ハッチにあるスペアタイアに括り付け、御殿場インターから東名高速にのって東京へとひた走った。
車を走らせながらグローブボックスの中を確認すると、入れっ放しにしておいた俺のスマホがそのままだった。シガーソケットにスマホを繋いで充電する。
しかし、ポーラの電話番号もラインのアドレスも聞いてなかったことを思い出す。
未来の世界は、8Gだった。今はまだ、5Gが出回り始めたばかりだ。「8Gと5Gじゃ、番号を知っていても、通信出来るわけないよな」と思いながら助手席のシートにスマホを放り出し、スピードを上げた。
