「親父と乙女が、俺のせいで死んでしまうのか? もしかしたら、ポーラは乙女が生んだ子供なのか? ということは、俺より八歳も年上のポーラは、俺の姪ってことになるじゃないか? そんなバカな! ちんぷんかんぷんだ!」
俺はもう頭の中がパニックになっていた。
着替えを持ってきてくれたジェロニモに、全てを打ち明けた。
樹海の森でタイムスリップしてしまった話を。信じてはもらえないかもしれないとは思ったが、壁に描いた落書きのことも、親父のことも妹のことも、ポーラたちのことも、全部話した。
先日から何度も青木ヶ原の樹海にこっそり行っていた訳は、過去に一旦戻りたかったけど、それが出来なかったことを話した。
ジェロニモは黙って全てを聞いてくれ、ゆっくりと口を開いた。
「お前がバンブーモータースに来たのは八月の満月、レッドムーンの時。おそらくポーラたちが過去に行ったのはその一ヶ月前、七月の満月、サンダームーンの時」
「そういえば、樹海でポーラたちが来たその同じ夜、明治神宮で、ベティとワンちゃんがきた。それから俺がこっちに来た時も満月だった……」
「満月の夜、パワープレイスで、丸い輪を、鳥がくぐると、向こうの世界に行ける。これ、先祖から伝わる話。お前の鳥、お前の小さいドローン……」
「俺は帰りたい。でないと親父も妹も、俺のせいで死んでしまう。俺は帰らなくてはいけないんだ」
「一度、違う世界に行って戻ると、悪魔の手先になる。それからもう一度行くと、本物の悪魔になってもう戻れなくなる。あっちの世界、こっちの世界、何度も行けるのは、鳥と空の人だけ。空の人は、宇宙から来た神さま。これも、俺の先祖から伝わる話」
「俺は悪魔の手先になってもかまわないから、帰りたい。このままでは親父と妹が……」
「今日、満月。ハーベストムーン。チャンスは今夜……」
「頼む! ジェロニモ。連れて行ってくれ! 頼む……」
ジェロニモはしばらく黙って俺の目を見つめていたが、何も言わずに病室を出て行った。
「ああ、頼む! ジェロニモ。待ってくれ、連れて行ってくれ! 頼む……お願いだ……」
筋弛緩剤が効いている俺の体は、目と口しか動かすことが出来なかった。
それから一時間後、ジェロニモが病室に戻って来た。俺の荷物とロープを持っている。
「本当にいいんだな。もうこっちには戻れない」
俺は目で合図した。
俺はもう頭の中がパニックになっていた。
着替えを持ってきてくれたジェロニモに、全てを打ち明けた。
樹海の森でタイムスリップしてしまった話を。信じてはもらえないかもしれないとは思ったが、壁に描いた落書きのことも、親父のことも妹のことも、ポーラたちのことも、全部話した。
先日から何度も青木ヶ原の樹海にこっそり行っていた訳は、過去に一旦戻りたかったけど、それが出来なかったことを話した。
ジェロニモは黙って全てを聞いてくれ、ゆっくりと口を開いた。
「お前がバンブーモータースに来たのは八月の満月、レッドムーンの時。おそらくポーラたちが過去に行ったのはその一ヶ月前、七月の満月、サンダームーンの時」
「そういえば、樹海でポーラたちが来たその同じ夜、明治神宮で、ベティとワンちゃんがきた。それから俺がこっちに来た時も満月だった……」
「満月の夜、パワープレイスで、丸い輪を、鳥がくぐると、向こうの世界に行ける。これ、先祖から伝わる話。お前の鳥、お前の小さいドローン……」
「俺は帰りたい。でないと親父も妹も、俺のせいで死んでしまう。俺は帰らなくてはいけないんだ」
「一度、違う世界に行って戻ると、悪魔の手先になる。それからもう一度行くと、本物の悪魔になってもう戻れなくなる。あっちの世界、こっちの世界、何度も行けるのは、鳥と空の人だけ。空の人は、宇宙から来た神さま。これも、俺の先祖から伝わる話」
「俺は悪魔の手先になってもかまわないから、帰りたい。このままでは親父と妹が……」
「今日、満月。ハーベストムーン。チャンスは今夜……」
「頼む! ジェロニモ。連れて行ってくれ! 頼む……」
ジェロニモはしばらく黙って俺の目を見つめていたが、何も言わずに病室を出て行った。
「ああ、頼む! ジェロニモ。待ってくれ、連れて行ってくれ! 頼む……お願いだ……」
筋弛緩剤が効いている俺の体は、目と口しか動かすことが出来なかった。
それから一時間後、ジェロニモが病室に戻って来た。俺の荷物とロープを持っている。
「本当にいいんだな。もうこっちには戻れない」
俺は目で合図した。
