AKNBEが始めて採用したドキュメンタリー手法だ。しかし、撮られているメンバーはどうしてもカメラの存在を意識しない訳にはいかない。ヲタはそれが本物だと思って有り難がるが、テレビの密着ドキュメンタリー番組と同じで、多少の無理とヤラセがある。
ピーチバレーズのは、それがなかった。ほんまもんの「リアルガチ」だった。
ドールキッズ社の入った雑居ビルの明治通り沿いには、日本だけでなく、世界中のマスコミが大挙して押しかけ、新規のヲタと、古参のヲタとの間で小競り合いが起こる。
窓から下を覗くと、雑居ビルの入り口にはバリケードが敷かれ、数人の男たちが睨みを利かせている。中心には、あの小太りの小山フトシが、腕組みをして立っていた。
未来 神奈川 御殿場
「目が覚めたか? お前さんは優勝したんじゃ。ポルテの二機は、第一ループにペラが接触して、一秒ずつ減点されたんじゃ。じゃからわしらが優勝じゃ。次は世界じゃぞ!」
俺が夢から目を覚ますと、亀爺さんが覗き込んで、つばを飛ばしてわめいていた。
墜落寸前に、筋弛緩剤と麻酔を混合したガスがヘルメットの中に充満した。それは、衝突する寸前、パイロットの体をタコのようにふにゃふにゃにして、怪我を軽減させるための神経ガスだ。
爺さんはそれを濃いめにセットした。三日三晩眠ったらしい。まだ、効いているのか体が異常にだるいし、動かない。目だけ動かせる。なぜか、見覚えのある病院だった。
窓の下には男の子と女の子が並んで手をつないでいる子供の落書きがあった。男の子の下には「お兄ちゃん」と書いてあり、女の子の下には、「おとめ」と書いてある。
はっきり覚えている、妹の乙女が描いた落書きだ。
母親が出て行ってから、俺たちの遊び場は病院の空き部屋になった。その時に乙女が描いたのだ。俺が親父にこっぴどく怒られたからよく覚えている。しかし、なぜ?
「ここはどこだ?」爺さんに訊いてみた。
「この病院はわしの女房が、病気になった時、世話になって、息を引き取った病院じゃ。もう三十年近く前になるかのう。その時の先生は星野っちゅう、ええ先生じゃった」
「えっ? ほ、ほ、星野?」
ピーチバレーズのは、それがなかった。ほんまもんの「リアルガチ」だった。
ドールキッズ社の入った雑居ビルの明治通り沿いには、日本だけでなく、世界中のマスコミが大挙して押しかけ、新規のヲタと、古参のヲタとの間で小競り合いが起こる。
窓から下を覗くと、雑居ビルの入り口にはバリケードが敷かれ、数人の男たちが睨みを利かせている。中心には、あの小太りの小山フトシが、腕組みをして立っていた。
未来 神奈川 御殿場
「目が覚めたか? お前さんは優勝したんじゃ。ポルテの二機は、第一ループにペラが接触して、一秒ずつ減点されたんじゃ。じゃからわしらが優勝じゃ。次は世界じゃぞ!」
俺が夢から目を覚ますと、亀爺さんが覗き込んで、つばを飛ばしてわめいていた。
墜落寸前に、筋弛緩剤と麻酔を混合したガスがヘルメットの中に充満した。それは、衝突する寸前、パイロットの体をタコのようにふにゃふにゃにして、怪我を軽減させるための神経ガスだ。
爺さんはそれを濃いめにセットした。三日三晩眠ったらしい。まだ、効いているのか体が異常にだるいし、動かない。目だけ動かせる。なぜか、見覚えのある病院だった。
窓の下には男の子と女の子が並んで手をつないでいる子供の落書きがあった。男の子の下には「お兄ちゃん」と書いてあり、女の子の下には、「おとめ」と書いてある。
はっきり覚えている、妹の乙女が描いた落書きだ。
母親が出て行ってから、俺たちの遊び場は病院の空き部屋になった。その時に乙女が描いたのだ。俺が親父にこっぴどく怒られたからよく覚えている。しかし、なぜ?
「ここはどこだ?」爺さんに訊いてみた。
「この病院はわしの女房が、病気になった時、世話になって、息を引き取った病院じゃ。もう三十年近く前になるかのう。その時の先生は星野っちゅう、ええ先生じゃった」
「えっ? ほ、ほ、星野?」
