ドローンレーサー

「まあまあまあまあカンちゃん落ち着いて、セリフがないと、すべることもないでしょ」
 広部がなだめたが、韓はますます怒って、頭から湯気を出す。
「っていうか、こんなめちゃくちゃなの、受けるの?」と、ポーラ。
「過去から未来にタイムワープするなんて、いまどきありえないっしょ! ラノベじゃあるまいし」
「いまどきって言ったけど、それどっちよ? 未来なの、今なの?」
「この際、どっちだっていいじゃない。だいたい、夏休み限定のバイトでしょ? 大阪から東京に来て、アルバイトしてると思えば、いいんじゃない?」
「そうよ、タイムスリップしたなんて、みんなで夢見てるのよ」
「この三ヶ月間のバイトが終わったら帰るのよ。大阪に」
「なに、寝言言ってんのよ。大阪じゃなくて未来にかえるのよ。でも帰れないかもしれないのよ!」
「これって、ドッキリキューチューブってやつじゃない?」
「この古臭い感じ、何もかもセットなのよ」
「そんなこと言ったって、私たち、未来からこっちにタイムスリップしてきたんじゃない!」
「ちゃんと前向きに話し合おうよ!」
「あり得る話よ。これはいいストーリーよ」
「いくら原始人でも石斧持ってるのはおかしいわ、普通はチェーンソーでしょ」
「だいたい十手ってなに? え? 江戸時代の警察? なんで警官がそんなものもってるの? 警官は手裏剣でしょ!」
「何言ってんの! 手裏剣は侍が持ってた武器だってば、漫画で読んだことあるわ」
「手裏剣はスパイでしょ! スパイがなんでチャイナドレス着て銀行強盗してんのよ」
「だいたいこんな古い紙のお金なんて、生まれて初めて見るわ。誰? このおじさん?」
「聖徳太子って人じゃない? それ、昔のソーリよ」
「だいたい、かんしゃく玉なんて、未来にはないわよ」
「ちがうよ、そこは過去の世界だから、かんしゃく玉があるんじゃないの?」
「でも未来じゃあホッタテモンロケットとかで、ふつうにお金持ちが宇宙旅行に行ってたから、原始人が宇宙船にワープするのもあり得る話じゃない?」
「そういえばゾゾンビタウンの、なんとかってチョビヒゲの猿みたいなおじいさん、月に行くっていったきり帰ってこなかったじゃない。あれはきっと、別の星にワープしたのよ」
「ワープって、やればできるのよ!」