「でも、やめようよ、そんなこと。パクっちゃだめだと思う」と、ベティ。
「インスパイアされたって言えばいいのよ。ちょっとぐらいだったらパクっあっ！」　
　パクっと言った時、興奮した王の口から飴が飛び出し、床に転がる。
　飴を追いかける王。拾った飴をまた口に放り込んだ。
「三秒以内だからヘーキヘーキ。ヘーキよ、『お好み次第』も」王はぺろっと舌を出す。
　ヘドロがヒッポホップ系のダンスをしながら、ハスキーボイスで『お好み次第』を歌い出した。

　ひろしまふ～
　かんさいふ～
　たっぷりいれて　かきまぜて～
　ビッグな鉄板　ソーホット
　お好みソースは　ソーグッド
　おいらのハートは　チョー　リルゥ
　ようふ～　わふ～　さいたまふ～
　ふーふーふーふー　いばらぎふ～
　おぃらたちみんな　とちぎ……

「ダメだダメだ！　そんなんじゃ全然ダメだ！」
　怒鳴りながらレッスンスタジオに入ってきた広部。
　ヘドロは両手の親指を下に向け、足を広げたまま固まった。
「そんな田舎のヤンキーが歌うラップみたいなのが受けるわけないだろっ！」
　広部は大量の衣装を抱えたまま、みんなに話しかける。
「次はこの衣装で、あることをやってもらう。社長はまだ、全然、君たちのことを諦めていない。むしろ期待している」
　そう言いながら、メンバーに衣装を手渡していく。
　広部はそれに着替えるよう強い口調で命令した。強い口調で命令したのは、メンバーがその衣装を嫌がると思ったからだ。
　しかし、着替えたメンバーたちは、多少は恥ずかしがっていたものの、キャーキャー言いながら喜んで着替え室から出てきた。
　ヘドロはアメリカ国旗。なんと星条旗のビキニだ。
　さらに広部は、テンガロンハットを被って、カーボーイブーツを履き、ガンベルトを二本、腰にしろと命じた。ついでにエアガンを持たせる。
　スコーピオン・モッドＭ。最強のコンパクトタイプ電動サブマシンガンだ。
　ベティはピンク色を基調とした未来の宇宙飛行士。体にぴったりとフィットしている。宇宙飛行士というより、ＳＦ映画の女性兵士みたいだ。広部はヘルメットと、おもちゃのレーザーガンを渡す。トリガーを引くと、赤いレーザー光線が出た。
　カンちゃんは、チマチョゴリ。ななな、なんと、ミニスカートのチマチョゴリだ。
「あたしのことバカにしてんじゃないのっ！」