「いや、そうじゃない。過去じゃなくて、俺に出来るのは、これからの君の、未来を変えれるということだ」
「もし、俺がおじさんの言う通りにやって、お金持ちになったら、おじさんのその財布の中身が増えるってことですか? 俺が美人と結婚したら、おじさんの隣には美人のおばさんが一緒にいるってことですか?」
狩田は返事に窮し、パスポートと財布を握りしめた。
「もし、俺がこのたこ焼きを食い終わって、その通りに出て車にひかれて死んだら、おじさんは、消えていなくなるってことですか?」
若い狩田は、そっぽを向いてたこ焼きを食べ始めた。
年とった方の狩田は、無言のままうつむいている。じわじわと汗が滲む。
「じゃあ、俺はこれで」
若い狩田はたこ焼きを食べ終わると、長椅子から立ち上がり、パッポン通りへと向かう。
「か、狩田くん! 君は近いうちにパタヤビーチに行く予定はないかっ?」
若い狩田は振り返って不思議そうに首をひねり、愛想笑いをするとパッポン通りの人ごみへと消えていった。
降り注ぐ南国の陽光と椰子の木陰。
数日後、年とった方の狩田は、パタヤビーチに立っていた。
国王の誕生日とあって、ビーチはお祭り騒ぎだ。黄色いTシャツを着た人たちで溢れかえっている。水着姿の外国人観光客や子供達が、波打ち際で戯れ、スタイルのいいビキニ姿の女性たちが、パラソルを持って遊歩道を歩いている。
屋台のアイスクリームスタンド。
その日の午後、そこで狩田はリサ・テゾンと出会ったのだ。
「微笑みの国から黒船襲来!」というキャッチフレーズで優しく笑う、その愛くるしい童顔は、日本の少年たちだけでなく、大人の男も夢中にした。
たどたどしい日本語でしゃべる彼女は、お茶の間の人も虜にした。
狩田は、リサを、女好きな美容師に騙されないように、若い狩田とリサにアドバイスし、やり直させようと考えていた。
リサ・テゾンは三十年前の今日、友達と一緒に、そのアイスクリームスタンドに立ち寄って、アイスクリームを頬張る。そこに若い狩田が来て、気まぐれにナンパしたのだ。
しかし、しばらく待っても、若い狩田は現れない。
アイスクリームスタンドの側に置いてあった、古びた木の箱に座って辛抱強く待ってみたが、いつまでたっても狩田もリサも来ない。
「もし、俺がおじさんの言う通りにやって、お金持ちになったら、おじさんのその財布の中身が増えるってことですか? 俺が美人と結婚したら、おじさんの隣には美人のおばさんが一緒にいるってことですか?」
狩田は返事に窮し、パスポートと財布を握りしめた。
「もし、俺がこのたこ焼きを食い終わって、その通りに出て車にひかれて死んだら、おじさんは、消えていなくなるってことですか?」
若い狩田は、そっぽを向いてたこ焼きを食べ始めた。
年とった方の狩田は、無言のままうつむいている。じわじわと汗が滲む。
「じゃあ、俺はこれで」
若い狩田はたこ焼きを食べ終わると、長椅子から立ち上がり、パッポン通りへと向かう。
「か、狩田くん! 君は近いうちにパタヤビーチに行く予定はないかっ?」
若い狩田は振り返って不思議そうに首をひねり、愛想笑いをするとパッポン通りの人ごみへと消えていった。
降り注ぐ南国の陽光と椰子の木陰。
数日後、年とった方の狩田は、パタヤビーチに立っていた。
国王の誕生日とあって、ビーチはお祭り騒ぎだ。黄色いTシャツを着た人たちで溢れかえっている。水着姿の外国人観光客や子供達が、波打ち際で戯れ、スタイルのいいビキニ姿の女性たちが、パラソルを持って遊歩道を歩いている。
屋台のアイスクリームスタンド。
その日の午後、そこで狩田はリサ・テゾンと出会ったのだ。
「微笑みの国から黒船襲来!」というキャッチフレーズで優しく笑う、その愛くるしい童顔は、日本の少年たちだけでなく、大人の男も夢中にした。
たどたどしい日本語でしゃべる彼女は、お茶の間の人も虜にした。
狩田は、リサを、女好きな美容師に騙されないように、若い狩田とリサにアドバイスし、やり直させようと考えていた。
リサ・テゾンは三十年前の今日、友達と一緒に、そのアイスクリームスタンドに立ち寄って、アイスクリームを頬張る。そこに若い狩田が来て、気まぐれにナンパしたのだ。
しかし、しばらく待っても、若い狩田は現れない。
アイスクリームスタンドの側に置いてあった、古びた木の箱に座って辛抱強く待ってみたが、いつまでたっても狩田もリサも来ない。
