もちろんミニスカートだ。靴は踊りやすいダンスシューズ。
大急ぎで着替え、もう一度「スターレット」の前奏が鳴りだすとともに飛びだした。
運動神経抜群のヘドロは、側転を三回繰り返した後、バク転を決めた。
他のメンバーも全力疾走でステージに躍り出る。今度は韓がセンターだ、韓が歌う!
「あなたのロケットぶちこん……」
次の瞬間、韓が、踏ん張った右足を滑らせ激しく尻餅をついた。右足のダンスシューズが脱げて、靴下には黄色いオイルが付いていた。誰かがシューズの中に、オリーブオイルを垂らしたのだ。ピザの出前をとった時についてくる黄色いオリーブオイルだった。
「っつうぅぅ! ちくしょうっ! なんてことしやがる、マスクの奴らだっ!」
韓がつぶやいたのをマイクが拾って、スピーカーから声が響いた。
「カンちゃんっ! 大丈夫?」
「しっかりしてっ!」
レイワとヘドロが真っ先に駆け寄った。アクシデントは必ず起こる。
でも、そんな時には必ず「神対応」しろと、練習中に何度も言い聞かされていた。
しかし、その公演ではハンドマイクではなく、ワイヤレスのヘッドセットマイクが使われていた。
ヘッドセットマイクは、ダンスのうまいヘドロが、バク転や側転をするのを売り物にしたい社長の春本が決めたのだった。激しいダンスの後、「ハアハア」という女の子たちの息遣いが聞こえるのも、ヲタにはたまらなく嬉しい。しかし、それが裏目に出た。
アイドルが絶対に言ってはいけないNGワードを拾って、大音量で流れてしまったのだ。
会場のお客たちはあっけにとられ、静まりきっている。
後方彼氏面(ズラ)で、春本の隣に立っていた広部は、頭を抱えてしゃがみこむ。
春本は黒縁メガネの目が点になり、小指を鼻につっこんだままロダンになる。
レコード会社の女性は、こめかみを押さえていた。
「ちくしょう!、誰なのっ、こんなことしたのっ!」
右足を引きづりながら控え室に飛び込んで行った韓が、カンカンになって激昂している。右手には、中がオリーブオイルで濡れたダンスシューズ。
「カンちゃん、やめてっ!」とレイワが叫ぶ。
「やめてっ! カンちゃん」ヘドロが羽交い締めにしようとする。
「カンっ! やめてっ! やめなさいっ!」ポーラが激怒した。
しかし、韓の怒りは収まらない。ヘドロの腕を振りほどき、ポーラの制止も、もろともせず、
大急ぎで着替え、もう一度「スターレット」の前奏が鳴りだすとともに飛びだした。
運動神経抜群のヘドロは、側転を三回繰り返した後、バク転を決めた。
他のメンバーも全力疾走でステージに躍り出る。今度は韓がセンターだ、韓が歌う!
「あなたのロケットぶちこん……」
次の瞬間、韓が、踏ん張った右足を滑らせ激しく尻餅をついた。右足のダンスシューズが脱げて、靴下には黄色いオイルが付いていた。誰かがシューズの中に、オリーブオイルを垂らしたのだ。ピザの出前をとった時についてくる黄色いオリーブオイルだった。
「っつうぅぅ! ちくしょうっ! なんてことしやがる、マスクの奴らだっ!」
韓がつぶやいたのをマイクが拾って、スピーカーから声が響いた。
「カンちゃんっ! 大丈夫?」
「しっかりしてっ!」
レイワとヘドロが真っ先に駆け寄った。アクシデントは必ず起こる。
でも、そんな時には必ず「神対応」しろと、練習中に何度も言い聞かされていた。
しかし、その公演ではハンドマイクではなく、ワイヤレスのヘッドセットマイクが使われていた。
ヘッドセットマイクは、ダンスのうまいヘドロが、バク転や側転をするのを売り物にしたい社長の春本が決めたのだった。激しいダンスの後、「ハアハア」という女の子たちの息遣いが聞こえるのも、ヲタにはたまらなく嬉しい。しかし、それが裏目に出た。
アイドルが絶対に言ってはいけないNGワードを拾って、大音量で流れてしまったのだ。
会場のお客たちはあっけにとられ、静まりきっている。
後方彼氏面(ズラ)で、春本の隣に立っていた広部は、頭を抱えてしゃがみこむ。
春本は黒縁メガネの目が点になり、小指を鼻につっこんだままロダンになる。
レコード会社の女性は、こめかみを押さえていた。
「ちくしょう!、誰なのっ、こんなことしたのっ!」
右足を引きづりながら控え室に飛び込んで行った韓が、カンカンになって激昂している。右手には、中がオリーブオイルで濡れたダンスシューズ。
「カンちゃん、やめてっ!」とレイワが叫ぶ。
「やめてっ! カンちゃん」ヘドロが羽交い締めにしようとする。
「カンっ! やめてっ! やめなさいっ!」ポーラが激怒した。
しかし、韓の怒りは収まらない。ヘドロの腕を振りほどき、ポーラの制止も、もろともせず、