みんな一斉に飛び出す。センターはレイワ。

 あなたのロケットぶちこんで はやくはやく
 小さな星の私たち
 見落とさないでね
 あなたのミサイル 待ってるわ
 はやく見つけて あなたの ぶっとい望遠鏡で
 はやく はやく 発射して
 あなたのロケット ぶちこんで

 歌い終わり、後奏が流れている時、客席が見えた。
 関係者席の椅子に腰掛け、?杖をついていた社長の春本の指先がリズムを取っている。
 ?杖をついたまま、人差し指の指先で、自分の鼻の頭をトントンと叩いているのだ。
 時々、鼻毛を押し込んでいる。春本が、考え事をしているときの癖。
 隣に座ったレコード会社の女性も、腕組みをしたままだが、指先はビートを刻んでいた。
 二曲目が始まる。「エールを君に」だ。

 ぼくは知っている 君がいま 立ち止まっていることを
 ヲタとよばれても
 ヒッキーと言われても
 ぼくは知っている
 君はゲームの天才さ
 君は誰より 強いんだ
 撃たれたって 転んだって
 また立ち上がって 這い上がれ
 サバゲーする君 サイコーさ!
 きみにっ きみにっ きみだけにあげる このエールの歌を~

 今回は、あんまり押し付けがましくならないように、全員、バラード調で歌った。
 ステージの中ほどに立ったまま、サビの、「きみだけにあげる、このエールの歌を~」のところでは、前に突き出した手をヒラヒラさせながら、一列に並んだメンバー全員、後ずさった。
 初回公演の時に最前列の真ん中あたり、最前ゼロズレに陣取っていた六人のお客のうちの一人が、サイリウム(ケミカルライト)をワイパーし始めた。
 それを見て、隣の少年もサイリウムを取り出した。あのチェルノしてしまった少年だ。
 隣の小太りの中年男が、両手にサイリウムを持って、夢中で振り始める。
 最前列から次第に、後席の方へと、波打つようにサイリウムの光が広がってゆく。 
 数人が大声をあげる。
「ピチバレ! ピチバレ! ピチバレ! ピチバレ! ピチバレ! ピチバレ!」
 しかしそれはビッグウェイブとは言えず、さざ波といった感じ。
 社長の春本はレコード会社の女性と難しい顔を突き合わせて、話しこみ始めた。
 巷のヒット曲のカバーソングを何曲かはさみ、衣装チェンジをする。
 メイドカフェの店員風から、激しいダンスが出来る、ウエストが見えるセパレート。