「おおっ!」と爺さんの声。高度計をチラッと見ると、一キロとなっている。
 そこから垂直にフルスピードで急降下した。
 地上に激突する寸前で、機首を持ち上げブリッジをくぐる。
「うわっ!」と爺さん。
 スラロームを、速度を落とさないままひょいひょいかわす。
 ゲートをくぐると、空中に設置された、チェッカーフラッグがはためく!
 ピピピピピピピピ! と電子音がして点数が出た。
「おおっ!」爺さんがのけぞる。俺には点数の意味は、いまいちよくわからない。
 そのまま市街地へと飛行させた。
 千葉なのだろうか? ゾゾンビタウン・マリーナスタジアムらしきものが見えた。
 そこの周りを高速で二、三周すると、東京湾の海上に出る。
 ゲートブリッジが見えた。二匹の恐竜が向かい合っているような奇妙な形をしていることから、平成時代には恐竜橋と呼ばれていたやつだ。
 鉄製の、縦の柱と斜めの梁が複雑に絡み合って出来ている。
 猛スピードでゲートの下をくぐると風圧で海が飛沫を上げた。三百六十度急旋回し、今度は橋の欄干に突っ込んだ。
「うわっ! あぶないっ!」と爺さんが悲鳴を上げる。
 瞬間的に機体を縦にしてくぐると、すぐに急旋回し、今度は斜めになった所を、機体を傾けてくぐる。それを五、六回繰り返すと、爺さんが尻餅をついた。
 ゲートブリッジから離れ、都心に向かう。
 すぐに、スカイツリーが見えてきた。
 試しに、ティルトモーターのスイッチを入れてみる。ものすごい加速だ。ターボパワーのエンジンと同じだ。一瞬でスカイツリーが目の前。衝突寸前でかわす。
「ひっ!」と爺さん。
 超高速のまま、スカイツリーの周りを旋回すると、弾けたように東京タワーに向かった。
 ティルトしたまま、今度は可変翼のスイッチを入れた。
「うわっ!」今度は俺が声を出した。異次元の加速!
 ターボパワー全開の上に、スーパーチャージャーが回り出したかのようだ。
 瞬間、東京タワーがモニターいっぱいに広がる、もうかわす時間はないっ!
「ひえっ!」っと悲鳴を上げたのは、爺さんの方。
 俺は、可変翼が閉じているのを体で感じながら、超高速で東京タワーの真っ赤な欄干をくぐり抜けた。まるでロケット! 
 通過する瞬間、「ビシッ!」と音がして、ピピピピピと黄色ランプと警告音。
「ダメージ、ケイビデス、ダメージ、ケイビデス」電子音声。