「いいねいいねカワイイね! カワイイカワイイって言われると、本当に可愛くなっていくから、いっぱいカワイイっていわれるように、はりきって行こーね~!」
 と、カメラマンのおっさんに言われても、メンバー全員、さらにどっちらけ。
 はっきりいって、何もかもが古くさい。
 とまあ、そんなことを言っても始まらないので、おっさんカメラマンに言われるがまま、テキトーに調子を合わせる。
 センターはとりあえず年齢順で決められた。高校生のレイワがセンター。両脇を中学生のヘドロと、韓。右サイドが中学一年のベティ。左サイドは小学六年の王。
 たったの五人なので、フロントも二列目もない。全員がフロントだ。
 フォーメーションは暫定で、あとからファン投票というか、選挙で決められる。
 小六の王がセンターになることだって大いにありえる。
 ネットメディア向けには、「関西の数万人から選抜された国際的美少女」という触れ込みで売り出すらしい。
 数日後、パンフレットやウェブサイトが出来上がった。もちろんネットでバズらせる対策として、ドールキッズのウェブ部隊が公式ホームページを作り、ライン、ツイッター、インスタ、フェイスブック、ありとあらゆるSNSのアカウントを作成した。
 部隊と言っても、メガネをかけ、太ったドールキッズ社のヲタ契約社員、ひとりだけ。
 パソコンをしながらいつもポテトチップスを食べている。
 準備万端。
 デビューのその日は、新宿の地下にある、小さめなライブハウスだった。
 色々なアイドルユニットが登場する前座でデビューするのが普通だが、ピーチバレーズは違った。
「関西の数万人から選抜された国際的美少女『神ファイブ』降臨!」と、鳴り物入りでデビューなのだ。
 しかし、観客はたったの六人。
 デビュー曲を披露しても、お客は黙って立ったままたまま。他のアイドルグループのヒット曲のカバーを数曲挟んで、ラストにもう一度、デビュー曲「エールを君に」を歌う。
「さあー、みんなっ! ノリノリでいこうぜっ!」
 レイワが金切り声を上げる。
 お客は地蔵。
「さあ、のってのってっ!」
 間奏の間に、五人全員でステージを降り、六人のお客のすぐ目の前まで行って煽るが、さっぱりのらない。のらないどころか、ドン引きしている。
「エールを君に」は青春応援ソングなのに……。