ガラガラガラガラガラガラガッシャーン! 大音響とともに辺りが明るくなり、目が覚めた。
 驚いて体を起こして畳部屋から見ると、ガレージのシャッターが全開にされ、差し込む光の中に、一人の大男のシルエットが立っている。シルエットがこちらの方に歩み寄って来ると、黙って畳の部屋に上がり込み、俺の側を通り越し、奥の部屋に入って行った。
「おやっさん、朝だ」よく響く、低音の声が奥から聞こえる。
 奥の部屋から出てきた男がちゃぶ台の脇に座った。
 ゆうべの爺さんと同じく、「TURTLE DRONE MOTOS」と胸に書かれた緑色のつなぎを来ている。つなぎは油で汚れたまま。腰には、インディアンのお守り、鳥の羽で出来た、ドリームキャッチャーがぶら下がっていた。
「あんた、新入り? オレ、ジェロニモ」
 野太い重低音の声。首から顔にかけてびっしりとタトゥーが入っている。
 トーテムポールに彫られているような、一目見たら忘れられない、奇抜な図柄。
 ジェロニモと名乗るそのネイティブアメリカン系の若者は、畳部屋の隅に置かれた冷蔵庫から弁当の入ったプラスチックパックを二つ取り出し、レンジでチンすると、フォークで手早く掻きこみ、ガレージの方に行った。
 弁当の中身はマッシュポテトとグリーンのペースト、それにソーセージとスクランブルエッグ。栄養バランスのとれた弁当のようで、男の両腕には手首までタトゥーがあった。
 朝の光が差し込むガレージには、五台のドローンが、ところ狭しと並んでいる。
 ばらばらに分解されたドローンの中で、さっきのネイティブアメリカン系の若者が、帽子を被って組み立て作業を初めた。
「ふわーぃ……。どうじゃ、お前さんも手伝ってみんか?」
 寝ぼけ眼で出てきた爺さんがあくびをしながら俺に言った。
「え? いや、俺はすぐ、樹海にもどらなければ……」
「ならんっ! それだけはわしが絶対にゆるさん!」
 眠そうなとぼけた顔が一瞬で険しくなった。
 ゆうべの爺さんの話では、爺さんは自動車メーカー、広島マツンダの技術者だったらしい。電動化や、ドローンなど、新技術の導入に消極的なマツンダに嫌気がさし、辞めた。