俺にとってはあんな樹海、恐ろしくも怖くもなんでもない。
「明日の晩、樹海にひとりでこっっそり行って実験してみるか……」
ピチバレのデビューは、二週間後に迫っていた。デビュー曲は「エールを君に」。青春応援ソングだ。メンバーは誰もが、「古くせえなぁ」と、文句を言ったが、何度も何度も歌って歌って踊りまくった。
未来 神奈川 御殿場
次の夜、俺はまた夜十時過ぎ頃、RAV4を地下ガレージから出すと、首都高を池尻大橋から乗り、東名高速を御殿場に向けて走らせた。
御殿場インターを降りると、ド派手なラブホテル街。
ラスベガスのような御殿場の名所、セックスタウンだ。
一瞬、服や必要な物を取りに実家に戻ろうかと迷ったが、こんな夜中だ。クソ親父は病院で当直か、寝ているだろうが、受験勉強で遅くまで起きている妹にでも見つかったら面倒なことになる。
俺はそのまま樹海に向かってRAV4を走らせた。
あの晩と同じように、荒地を入った所に車を停めると、樹海の奥地へと向かう。
相変わらず骸骨や、ミイラだらけだ。
あの晩、首を吊ったばかりの太った中年男の屍体は、あいかわらず枝からぶら下がっていて、メガネは地面に落ち乾燥してやせ細っている。内臓は腐敗し、ものすごい数のハエやウジ、それに腐乱臭がしている。叫び声でも上げているような不気味な顔つきだ。
満月の光が、木々の間から射し込み、ミイラの出歯を浮かび上がらせている。
LEDランタンもあの時と同じく、腰にぶら下げて持ってきた。
枝にぶら下げたロープにループを結ぶ。月の明かりが、そこらじゅうをまだらに照らしている。手のひらから離陸したドローンはループをくぐると、消えた。
「しめた!」
ループから覗くと向こうの樹海で、ドローンがホバリングしているが、似たような樹海の森は、今なのか未来なのか、どっちかわからない。けれど、確かにドローンはループの外からでは見えない。きっと未来だ。
俺は確かめるために、ループをくぐってみた。
しかし、くぐってみても、やっぱりわからない。
麓の町まで下りて確かめるしかない。
ドローンを手にひらに着陸させ、ループを仕舞うと俺は樹海の森を麓に向かって歩いた。
数は少ないが、首吊り屍体やミイラや骸骨が散乱している。
愛車を停めたあたりまで来ると、やっぱりRAV4はなかった。
「明日の晩、樹海にひとりでこっっそり行って実験してみるか……」
ピチバレのデビューは、二週間後に迫っていた。デビュー曲は「エールを君に」。青春応援ソングだ。メンバーは誰もが、「古くせえなぁ」と、文句を言ったが、何度も何度も歌って歌って踊りまくった。
未来 神奈川 御殿場
次の夜、俺はまた夜十時過ぎ頃、RAV4を地下ガレージから出すと、首都高を池尻大橋から乗り、東名高速を御殿場に向けて走らせた。
御殿場インターを降りると、ド派手なラブホテル街。
ラスベガスのような御殿場の名所、セックスタウンだ。
一瞬、服や必要な物を取りに実家に戻ろうかと迷ったが、こんな夜中だ。クソ親父は病院で当直か、寝ているだろうが、受験勉強で遅くまで起きている妹にでも見つかったら面倒なことになる。
俺はそのまま樹海に向かってRAV4を走らせた。
あの晩と同じように、荒地を入った所に車を停めると、樹海の奥地へと向かう。
相変わらず骸骨や、ミイラだらけだ。
あの晩、首を吊ったばかりの太った中年男の屍体は、あいかわらず枝からぶら下がっていて、メガネは地面に落ち乾燥してやせ細っている。内臓は腐敗し、ものすごい数のハエやウジ、それに腐乱臭がしている。叫び声でも上げているような不気味な顔つきだ。
満月の光が、木々の間から射し込み、ミイラの出歯を浮かび上がらせている。
LEDランタンもあの時と同じく、腰にぶら下げて持ってきた。
枝にぶら下げたロープにループを結ぶ。月の明かりが、そこらじゅうをまだらに照らしている。手のひらから離陸したドローンはループをくぐると、消えた。
「しめた!」
ループから覗くと向こうの樹海で、ドローンがホバリングしているが、似たような樹海の森は、今なのか未来なのか、どっちかわからない。けれど、確かにドローンはループの外からでは見えない。きっと未来だ。
俺は確かめるために、ループをくぐってみた。
しかし、くぐってみても、やっぱりわからない。
麓の町まで下りて確かめるしかない。
ドローンを手にひらに着陸させ、ループを仕舞うと俺は樹海の森を麓に向かって歩いた。
数は少ないが、首吊り屍体やミイラや骸骨が散乱している。
愛車を停めたあたりまで来ると、やっぱりRAV4はなかった。