「ていうか、もう出来てんじゃないの?」
 と、みんなに冷やかされるが、俺はまんざらでもない。八歳も年上の綺麗なお姉さんなのだ。
「あんたたち、勘違いしないでよ」と、ポーラは笑う。
 レイワは、赤いミニスカートに花柄の半袖ブラウス。黒髪をポニーテールにしている。
 ヘドロは、青いフレアスカート。白いTシャツ。天然パーマのおさげだ。
 韓は、緑色を基調とした派手な花柄のワンピース。ショートヘア。
 ベティは、ピンク色のポロシャツにミニスカート。胸にピカチュウがプリントしてある。柔らかそうな栗毛色の髪の毛と長いまつげの青い目。
 王は、黄色のダボっとしたオーバーオール。クレープがよく似合うし、いつものように長い髪をツインテールにしているからアニメのキャラのようだ。
 ポーラは、ドクロマークの黒いトレーナーに、ぴったりしたスエットパンツだ。
 みんなのあまりの可愛さに、道行く人たちが立ち止まる。
 少し歩くと、すぐに別のスカウトマンや、カメラ小僧が、近づいてくる。
 カメラ小僧かと思ったら、ちゃんとした雑誌の街角スナップらしい。
 女性の編集者らしき人が、
「すみませ~ん、私、こういう者なんですけど~、お写真撮らせてもらえませんか~ぁ」 
 と言いながら出版社の名刺を片手に擦り寄る。
「ほら、出番だよ」
 ポーラがニヤニヤしながら俺の肘に巨乳を押し付けてくる。
「すみません、この子たちまだ、デビュー前なんで、写真とかはちょっと……」キャップを被っている上に、ドクロマークの入った黒いスエットの威力は抜群だった。おまけにティアドロップ型のサングラスもしている。
「あ、デビュー前? す、すみません、失礼しました」
 そう言いながら、カメラマンも編集者も、いい歳した大人たちが蜘蛛の子を散らすように退散してゆく。
「なんか、スバルさんかっこいい!」
「スバルさん、いい感じ!」
「頼り甲斐がある!」
「大人って感じで素敵!」
「ポーラ姉さんにこき使われてる時とは別人みたい!」
 みんなべた褒めだ。
 ポーラが俺の方を見てウィンクした。
 表参道を原宿駅方面に向かって登って行くと、明治神宮が見えた。
 一番年下の王が少し不安そうな声で呟く。
「いざとなったら、あのループをくぐって、また元の世界に戻れるよね……」
 みんなが一斉に、俺を振り返った。