「あんた自分のことを、僕って言うのやめなよ。男なんだから、オレって言ったら。ほら、言って。みんなあんたのことを、心強い兄貴ってリスペクトしてんだからね。これからは俺って言わなきゃだめだよ」
「え? 僕がリスペクト? この僕が?」
「俺って言わなきゃだめだって言ったでしょ。たった今から俺、ほら言って、オレって」
 ということで、その時から「僕」は「俺」になった。
「ぼぼぼ、僕は、俺です」
「そう、それでいい、かっこいいよ。遅いからもう帰ろう。みんなが心配する」
 僕は、というか俺は、そのまま夜景になるまで一緒に眺めていたかった。

 会社に戻り、給湯室のミニキッチンで晩御飯の準備を始めた。
 母親が出て行ったせいで、妹の乙女も俺も、自分で食べる分は、なるべく自分でやる習慣が身についていた。そのおかげで、料理は出来た。
 レッスンスタジオの床に、出来た料理のお皿を並べていく。全員、床に座って食べるのだ。急にみんなの前で「俺」と言い始めるのは少し照れ臭かったけど、何だか、一人前の男になった気分だ。ポーラって案外優しいのかもな……。
 そう思いながらポーラを見ると、もう、タンクトップに着替えていた。
 うっかりオッパイの乳首のところを見ると、少しドキッとした。
「あんた、何、いやらしい目つきであたしのこと見てんの!」
 バッシーン! やはり容赦なく頬ビンタが飛んで来る。
 自分が俺になって、一段、昇格した気分になってきた。やっている内容は、相変わらず雑用ばかりだけど、妹の乙女よりさらに年下の美少女たちに、俺と言っていると、彼女たちの態度も明らかに違って来るのを感じる。なんだか、頼りにされているのだ。
 俺はいつの間にかポーラに調教され、奴隷というか、家来のようになりつつも、男っぽくなっている。俺は嬉しかった。
 食事後、後片付けをすると、いつもポーラのマッサージをする手にも力がこもる。
「あああ、そこそこ、あぁ、いぃ、あああ、あっ、オッパイはだめ」
 そのうちポーラは眠りにつく。
 狭いレッスンスタジオの中、乳首が透けたタンクトップ姿のポーラがすぐ隣、美少女五人は、ジャージ姿のままヨガマットをベッド代わりに、思い思いの場所で寝ている。
 そのそばで、俺も寝る。こんな俺ってどうよ?