青山通りにある火の国屋スーパーに入って買い物をしている時にも、
「きゃー! 懐かしい! ひゃー! こんなものもある!」と連発し、僕は、なんだか外人の、姉さん女房をもらったばかりの新婚さん夫婦みたいな気分だった。
ある日、いつもは混雑しているレジがすぐにすみ、火の国屋の駐車場からRAV4を出すと、ポーラが東京タワーに行きたいと言い始めた。
スカイツリーは遠いけど、スマホのナビで調べると、東京タワーなら十五分くらいで行ける。僕も行ったことなかったから一度、行ってみたかった。
平日の夕方とあって、東京タワーは、割と空いていた。
「六百三十四メートルのスカイツリーに人気を奪われてしまったのかもしれないね」
とか、知ったかぶりしながら、一緒にエレベーターに乗る。
入場料はちょっと高かったけど、食料費として広部から多めにお金をもらっていたから大丈夫だ。少しぐらいいいだろう。だってアルバイト代なんてもらってないんだから。
「未来にはスカイツリーと東京タワー以外、他に高い建物立ってた?」
と、ポーラに訊いた。
「未来は、大阪も東京も、そこらじゅう、見上げるような建物だらけよ。でも私は見上げてばっかりで、高い場所になんて行ったことがない……」
第一展望台から、さらに上の第二展望台へと上がった。
エレベーターのドアが開くと、夕日の直射光が、第二展望台の中を、燃えるような色に染め上げる、オレンジ色の世界。
展望台の中も、窓から見える東京の景色も、東京湾も空も雲も、全てがオレンジ色。
西の方角、富士山のあたりに夕日が沈みかけている。
僕もポーラも言葉を失った。
富士山に沈んでゆく夕日をただ黙って見つめ続ける。
太陽が完全に沈む寸前、ポーラの横顔をみると、オレンジ色に染まった顔が、一瞬、妹の乙女に似ていると思った。
乙女も、やたらとホクロとそばかすが多かったよな。
右目の下にある「M」の字に並んだ、五つのホクロを、ぼんやり見つめた。
ポーラが僕の視線を感じたのか、こっちを向くと、モロに目が合い、僕はあわてて夕日を見て、誤魔化した。
「すごく綺麗だね。実は僕も、東京タワーに来るのは初めてだったんだ」
「きゃー! 懐かしい! ひゃー! こんなものもある!」と連発し、僕は、なんだか外人の、姉さん女房をもらったばかりの新婚さん夫婦みたいな気分だった。
ある日、いつもは混雑しているレジがすぐにすみ、火の国屋の駐車場からRAV4を出すと、ポーラが東京タワーに行きたいと言い始めた。
スカイツリーは遠いけど、スマホのナビで調べると、東京タワーなら十五分くらいで行ける。僕も行ったことなかったから一度、行ってみたかった。
平日の夕方とあって、東京タワーは、割と空いていた。
「六百三十四メートルのスカイツリーに人気を奪われてしまったのかもしれないね」
とか、知ったかぶりしながら、一緒にエレベーターに乗る。
入場料はちょっと高かったけど、食料費として広部から多めにお金をもらっていたから大丈夫だ。少しぐらいいいだろう。だってアルバイト代なんてもらってないんだから。
「未来にはスカイツリーと東京タワー以外、他に高い建物立ってた?」
と、ポーラに訊いた。
「未来は、大阪も東京も、そこらじゅう、見上げるような建物だらけよ。でも私は見上げてばっかりで、高い場所になんて行ったことがない……」
第一展望台から、さらに上の第二展望台へと上がった。
エレベーターのドアが開くと、夕日の直射光が、第二展望台の中を、燃えるような色に染め上げる、オレンジ色の世界。
展望台の中も、窓から見える東京の景色も、東京湾も空も雲も、全てがオレンジ色。
西の方角、富士山のあたりに夕日が沈みかけている。
僕もポーラも言葉を失った。
富士山に沈んでゆく夕日をただ黙って見つめ続ける。
太陽が完全に沈む寸前、ポーラの横顔をみると、オレンジ色に染まった顔が、一瞬、妹の乙女に似ていると思った。
乙女も、やたらとホクロとそばかすが多かったよな。
右目の下にある「M」の字に並んだ、五つのホクロを、ぼんやり見つめた。
ポーラが僕の視線を感じたのか、こっちを向くと、モロに目が合い、僕はあわてて夕日を見て、誤魔化した。
「すごく綺麗だね。実は僕も、東京タワーに来るのは初めてだったんだ」