うつぶせの時はいいが、仰向けの時は、目を閉じてマッサージをした。
 すると、どさくさまぎれにオッパイに触れる。
 そんな時にも、やっぱりポーラは容赦なく頬ビンタをしたが、それでも僕は幸せだった。
 ポーラは、男嫌いで通していたが、
「なんだか、あんたとはウマが合うっていうか、一緒にいて、全然違和感がない。あんたが弟みたいな気がする」
 と言って、特別扱いしてくれた。
 ある日、「将来、プロのゲーマーか、ドローンレーサーになろうと思ってた。中学の時にはオンラインのコンペで世界チャンピオンになりかけたこともあるんだ」
 と、みんなの前で言ったことがあった。
 僕はきっと、ヲタだと思われてキモ悪がられるだろうと思ったが、正直に話した。第一、初対面の時、ドローンを飛ばしていた。今更、隠しようがない。
「キャー、カッケーッ!」
「すっごーい!」
「ドローンレーサー、ってすごいじゃん!」
「それであんな夜中の樹海で練習してたんだね! えらいね!」
 と、みんなが僕のことを一目置いた。
 みんなと四六時中一緒にいるせいで、未来のことが徐々にわかってくる。
 未来世界では、ドローンレーサーは現代のFー1レーサー以上の立場らしい。オンラインのドローンレースゲームは、毎年、正式な世界大会もやっているということだ。
 ラジコンドローンの操縦士はテレビや映画製作の現場で、カメラマンとして引っ張りだこ。警察官となって、車やバイクで逃走する犯人を、無人の小型ドローンで追い詰める、ラジコンドローン部隊まであると言うのだ。もちろん自衛隊にも。
 つまりラジコンドローン操縦士は、花形の人気職業らしい。
「くそっ、くそっ、くそっ、僕の思った通りじゃないかっ! あのクソ親父めっ!」
 僕は心の中で悪態をついた。
 当初は僕が逃げてしまわないように、RAV4の鍵は取り上げられ、徒歩での食料品の買い出しにも、いつも見張り番と称してポーラがついて来ていた。
 ポーラは、僕が献身的に働くのに感心して、少しずつ態度が柔らかくなってくる。
 重い食料品の買い出しに、RAV4を使うことを許してくれた。
 RAV4はドールキッズ社が入った雑居ビルの地下ガレージに停めてある。
 RAV4で買い出しに行く時には、いつもポーラがついてきたが、ポーラは過去の街を楽しんでいるようだった。