「ひゃ~、クラシックカーフェスティバルみたいだ。やっぱり、本当に過去に来ちゃったんだな……」
 狩田は並んで走っていた車を見て、驚きの声を上げ、車好きなのか、次々に車種を言い当てていた。外は、最新式のプリウスや、レクサスが走っている。
 狩田の話によると、首都高速上空は、未来ではドローンの通り道となって、車と同じくらいの数のドローンが、ひっきりなしに飛んでいるそうだ。
 ドローンが出すスピードによって飛行高度が区分けされているので、環八や環七など交差点でも渋滞しない。当然、信号などない。夜間は、赤と緑のナビゲーションライトを点けて飛ぶので、流星群のような美しさだという。
 地上ドローンポートを設置する余裕のない都心部では、ほとんどのドローンが、建物屋上に設けられたヘリポートから離着陸を行うのだそうだ。
「この三角地帯は再開発されて、どでかいビルが建っていたなあ……」
 狩田は、助手席の窓から見える世田谷通りと、246号線に挟まれた、木造家屋が密集する三軒茶屋のデルタ地帯を見下ろしながらつぶやいた。
「はあ、そうなんすか……」
 色々と説明をされても、僕は、気の抜けた返事しか出来ない。
 池尻大橋を過ぎる頃、後部シートの韓が身を乗り出して叫んだ。
「あっ、やばい! ベティと、ワンちゃんをもう呼んじゃってるけど、どうなるのっ!」
 ドローンで飛行中に、すぐに新幹線で東京に来いと、ラインで連絡したっきりだったらしいのだ。へたするともう東京に着いている頃だと言って焦り始めた。
 時計は深夜の十二時になろうとしている。
「どうなるの? ワンちゃんは、まだ小学生なんだよ~」
 おろおろし始めた韓が泣き出しそうになる。
「ちょっと、ラインいれてみて! いちかばちかよ!」
 ポーラが言った。少し間があり、
「すっげっ! ラインは通じる! [恵比寿を出たなう、もうすぐ渋谷駅] だって!」
 韓は電話をしたが通じない。電話は通じないがラインは出来る。
「なんなのよっ! この状況?! 山手線の外、何が見えるか聞いてみてっ!」
 ポーラが韓に言う。少し間があり、
[渋谷駅の手前なう。左にちょうでかい壁みたいに高いビル、もうすぐ駅つく。右に大きな駅ビル。左も同じく大きな駅ビルが見えて来たイング。電車の中、よっぱらいのおじさんだらけ、酒くさい、たまらん] 
「だって!」