昴は、やっと事態が飲み込めた。樹海の屍体やガイコツたちがランタンの灯りで浮き上がっているのだ。昴にとっては、そんなガイコツよりこの子たちの方がよっぽど不思議だった。
「ははは、はやくなんとかしてよっ! はやくこの地獄から連れ出してよっ!」
 ポーラが掴んでいる昴の左腕を、ものすごい力で雑巾のように締め上げた。
「いたたたた、わかったわかった、わかりました!」
 ポーラは、昴の腕を強く抱きしめたままオッパイを押し付けている。離そうとしない。
 昴はゆっくりとその場を離れた。もちろん四人の女性たちは、べったりと、くっついている。
 四匹のたこに絡み付かれたままのようだ。
「あわわわわ、ま、まま、まってくれ、まってくれ、おいていかないでくれぇぇぇ~」
 腰が抜けた狩田が、泣き出しそうな顔で這いずりながらついてくる。
 ランタンの灯りをたよりにゆっくりと進んでいくと、三十分ほどで、RAV4まで戻ることが出来た。
 四つん這いになって這って来た狩田も、なんとかついてこれた。女の子たち四人は、狭い後部座席に、逃げ込むように入り込み、スーツが泥だらけになった狩田が助手席に這い上がる。
 後部座席の四人は、引きつった顔をして、抱き合ったまま。顎がまだガクガクしている。
 絡み合うように抱きあう腕は大きく震えている。
 エンジンをかけ、その場を離れ、舗装した道路に出ると街路灯が道を明るく照らしていた。
 しばらく走るとコンビニも見えて来て、ライトに照らされた駐車場には人影もある。
 狩田が、後ろを振り返ってみるが、どうやら追っ手は来ていないようだ。
 やっと安心したのか、狭い後部シートで、四人が抱き合ったまま、堰を切ったように、大声をあげて泣き始めた。

 現在  東京 原宿  
 
 僕は、ラスベガスのカジノのようなラブホテルが乱立する御殿場インターから、咄嗟に東名高速にのり、RAV4を東京方面に向かって走らせていた。
 行くあてもなく高速を走らせていると、夜景の明るい街並みも見えてきて、泣いていた四人も、だんだん落ち着きを取り戻していく。
 彼女たちの話では、大阪から東京に向かう途中だったらしい。
 しかし、何故か、なかなか話が理解出来ない。助手席のおっさんが、僕がセンターコンソールに置いていたスマホを手に取ると、全員呆気にとられた。