「イイクニツクロウ鎌倉幕府? スイへーリーベーボクノフネ? サインコサインタンジェント? アルキメデスの定理? 歴代の総理大臣? そんなこと覚えて何になる?」 特に、数学や化学の試験なんて何が書いてあるのか、問題の意味すらわからない。
「来年もダメに決まってる」
ゲームと車以外の、もうひとつの趣味、ラジコンのドローンレーサーになる夢も、父親に猛反対された。
「もう夢も希望もない……」
病院は出来のいい妹の乙女(おとめ)が継ぐだろう。乙女座生まれだからという理由で父親がつけた名前だ。乙女は進学校でトップクラスの成績。乙女という名前とは真逆で、気が強く、スポーツ万能。喧嘩になると僕より運動神経がいいから、いつも昴が頬ビンタをされる。
そばかすとホクロが多いのが玉にキズだが、わりと美少女の部類に入る。
なんの取り柄もない昴とは大違いだ。
「僕なんて存在する意味はないんだ」
RAV4は夕方頃、青木ヶ原の樹海に着いた。富士山麓にある自殺で有名な場所。
舗装道路を外れ、荒地を四駆のRAV4で行ける所まで行くと、そこから先、車を乗り捨て、徒歩で樹海の奥へと歩いて行った。
昴が車から持って来たのは、手のひらサイズのマイクロドローンが入った小型バックとランディングパッド。それと、首を吊るためのロープ。
薄暗い樹海の森は、気味が悪いが、死のうと決めた昴にとっては、何も怖くない。
昴は父親に対する怒りに満ち溢れていた。
「くそっくそっくそっ、あのスケベ親父めっ! 母を裏切り、僕に医者になれと強要する。ミイラのような老人相手の終末期医療の医者なんてまっぴらだ! 命を助けても大して感謝されない。そのくせ医療事故が起こると訴えられる」
「僕は中学の頃、プロゲーマーになりたかった。それを親父はあっさり否定した」
「そんなバーチャルの世界で食っていけると思うのか?」
「プロのラジコンドローンレーサーになりたい」と言ってもだめだった。
「そんな職業に未来があるのか? 世間様に恥ずかしくないようにしろ」
医者以外、全て否定する。
「世間様っていったい誰なんだよ?」
「くそっくそっくそっ、僕の人生が台無しになったのはあいつのせいだ。このままだと殺してしまいそうだから、最後の親孝行として自殺してやるんだ。今に見てろよ!」
「来年もダメに決まってる」
ゲームと車以外の、もうひとつの趣味、ラジコンのドローンレーサーになる夢も、父親に猛反対された。
「もう夢も希望もない……」
病院は出来のいい妹の乙女(おとめ)が継ぐだろう。乙女座生まれだからという理由で父親がつけた名前だ。乙女は進学校でトップクラスの成績。乙女という名前とは真逆で、気が強く、スポーツ万能。喧嘩になると僕より運動神経がいいから、いつも昴が頬ビンタをされる。
そばかすとホクロが多いのが玉にキズだが、わりと美少女の部類に入る。
なんの取り柄もない昴とは大違いだ。
「僕なんて存在する意味はないんだ」
RAV4は夕方頃、青木ヶ原の樹海に着いた。富士山麓にある自殺で有名な場所。
舗装道路を外れ、荒地を四駆のRAV4で行ける所まで行くと、そこから先、車を乗り捨て、徒歩で樹海の奥へと歩いて行った。
昴が車から持って来たのは、手のひらサイズのマイクロドローンが入った小型バックとランディングパッド。それと、首を吊るためのロープ。
薄暗い樹海の森は、気味が悪いが、死のうと決めた昴にとっては、何も怖くない。
昴は父親に対する怒りに満ち溢れていた。
「くそっくそっくそっ、あのスケベ親父めっ! 母を裏切り、僕に医者になれと強要する。ミイラのような老人相手の終末期医療の医者なんてまっぴらだ! 命を助けても大して感謝されない。そのくせ医療事故が起こると訴えられる」
「僕は中学の頃、プロゲーマーになりたかった。それを親父はあっさり否定した」
「そんなバーチャルの世界で食っていけると思うのか?」
「プロのラジコンドローンレーサーになりたい」と言ってもだめだった。
「そんな職業に未来があるのか? 世間様に恥ずかしくないようにしろ」
医者以外、全て否定する。
「世間様っていったい誰なんだよ?」
「くそっくそっくそっ、僕の人生が台無しになったのはあいつのせいだ。このままだと殺してしまいそうだから、最後の親孝行として自殺してやるんだ。今に見てろよ!」