驚いて胸ポケットから取り出すと、レイワからだった。動画が二本、届いている。
スマホには俺が過去に撮った写真のデータが残っている、クラウドはもう使えないのでこのスマホに残った写真だけが、過去の世界、唯一の思い出だから、捨てずに持っていた。
[私より八歳も年下の、ス、バ、ル、お、じ、さん。テスト、頑張ってね~]
とポーラが手を振っている。
もう一本の方を再生してみた。
[キャー! あたしたち、これからオリンピックスタジアム公演で~す! スバルさんもテスト頑張ってね~、じゃあまたね~]
レイワたち、ピチバレの五人がゴンドラに乗ったまま、大観衆のオリンピックスタジアムに降下して行くところだった。
「なんでだ? そういえば、ベティとワンちゃんを、明治神宮で未来から呼び寄せた時は、彼女たちは繋がっていた。ラインは時空を超えるのか? テストって一体、なんだ?」
「テイク・ユア・マーク!」
という大音響のアナウンスがもう一度聞こえ、俺は慌ててドローンを浮上させ、スターティンググリッドに向かった。
現在 神奈川 御殿場
「お兄ちゃん、今頃、どうしてんだろう? 今度はずいぶん長いね……」
乙女はふと、朝食を食べる箸を止めて言った。
「乙女は、ここに牙があるのを知ってるか?」
父親は朝食を食べる手を止め、八重歯をむき出し指差した。
「この八重歯は、人間が昔、ライオンやオオカミの仲間だった証拠だよ。あいつはもう大丈夫だ、心配ない。ひとりで生きていけるさ……」
「私が心配してるのはあのバカのことじゃなくて、私がこの病院を継がなくちゃいけなくなるってこと、もう……」
「いやか?」
「あっ! やっべ、もう八時十五分! あと十五分しかないっ!」
乙女は大慌てで茶碗に残ったご飯を掻き込み、学生カバンをひっつかんで駆け出す。
口からししゃもの尻尾が出ていた。
現在 東京 オリンピックスタジアム
「あのぉ、すみません。タクのその荷物ぅ、ちょっと見せてもらえませんかぁ?」
小山フトシは、おどおどしながら勇気を振り絞って言った。気温は低いが汗が滲み出す。
トランシーバーで応援部隊を呼んだけど、応答がなかったからだ。
小男は猛然と走りだした。黄色いぬいぐるみを小脇に抱えている。
「あっ! コラ待てっ!」
スマホには俺が過去に撮った写真のデータが残っている、クラウドはもう使えないのでこのスマホに残った写真だけが、過去の世界、唯一の思い出だから、捨てずに持っていた。
[私より八歳も年下の、ス、バ、ル、お、じ、さん。テスト、頑張ってね~]
とポーラが手を振っている。
もう一本の方を再生してみた。
[キャー! あたしたち、これからオリンピックスタジアム公演で~す! スバルさんもテスト頑張ってね~、じゃあまたね~]
レイワたち、ピチバレの五人がゴンドラに乗ったまま、大観衆のオリンピックスタジアムに降下して行くところだった。
「なんでだ? そういえば、ベティとワンちゃんを、明治神宮で未来から呼び寄せた時は、彼女たちは繋がっていた。ラインは時空を超えるのか? テストって一体、なんだ?」
「テイク・ユア・マーク!」
という大音響のアナウンスがもう一度聞こえ、俺は慌ててドローンを浮上させ、スターティンググリッドに向かった。
現在 神奈川 御殿場
「お兄ちゃん、今頃、どうしてんだろう? 今度はずいぶん長いね……」
乙女はふと、朝食を食べる箸を止めて言った。
「乙女は、ここに牙があるのを知ってるか?」
父親は朝食を食べる手を止め、八重歯をむき出し指差した。
「この八重歯は、人間が昔、ライオンやオオカミの仲間だった証拠だよ。あいつはもう大丈夫だ、心配ない。ひとりで生きていけるさ……」
「私が心配してるのはあのバカのことじゃなくて、私がこの病院を継がなくちゃいけなくなるってこと、もう……」
「いやか?」
「あっ! やっべ、もう八時十五分! あと十五分しかないっ!」
乙女は大慌てで茶碗に残ったご飯を掻き込み、学生カバンをひっつかんで駆け出す。
口からししゃもの尻尾が出ていた。
現在 東京 オリンピックスタジアム
「あのぉ、すみません。タクのその荷物ぅ、ちょっと見せてもらえませんかぁ?」
小山フトシは、おどおどしながら勇気を振り絞って言った。気温は低いが汗が滲み出す。
トランシーバーで応援部隊を呼んだけど、応答がなかったからだ。
小男は猛然と走りだした。黄色いぬいぐるみを小脇に抱えている。
「あっ! コラ待てっ!」
