ドローンレーサー

 パイロットはヘルメットの代わりにカウボーイハットを被って葉巻をくわえている。
 北欧からはボロルボと携帯電話の覇者だったノンキヤ連合。
 ボロルボは中国資本に買収されて息を吹き返し、ノンキヤもAIで立ち直った。
「空飛ぶレンガ」と揶揄される四角いボディが特徴の四発クワッドコプター。
 空力特性を無視したような無骨なデザインだが、頑丈さが売り物。
「早く飛ぶことは捨て、わざとぶつけて、世界に、その丈夫さを見せつけようとしているのでは?」という噂が流れている。
 フランスからはパロッタネというドローンメーカーと、ルナー、日カンの、三社連合。
 自動車会社のルナーと日カンは一時、資本提携を解消したが、両社とも倒産しかける。そこでドローン開発では、また提携し直すことになったのだった。
 パロットは英語で、オウムとかチューリップを意味する。しかしそれをレース用ドローンの名前にすると迫力がないし、パロッタネでは日本人にとってはコミカルに聞こえる。
 そこで、「日カンスポーツ」とか「カトリーヌ」など、色々と案が出たが、結局「GTR」と無難な名前に収まった。「スカート」と言われる、チンスポイラーと、飛行機を思わせる、可変テールウイングを持つ。
 日本人の往年のファンは「スケバンの再来」と喜び、「スケG」と愛称をつけた。 
 DOHP、ダブルオーバーヘッドペラと呼ばれるボディ上部にマウントされた、四枚翼のデュアルペラを持つオクトコプターだ。
 日カンの「N」、ルナーの「R」、パロッタネの「P」を三つ重ねてデザインした、家紋のようなマークをつけている。トリコロールカラーに、日の丸みたいな赤い水玉模様の、おシャレなデザイン。リムジンエアバス社が空力技術を提供している。
 どのブースにも、各国のドローン・クイーンや、ドローン・ボーイコンテストの、上位入賞者が十人ずつ配置されている。
 俺が乗る、「TURTLE DRONE MOTORS」のモンスタードローンも、ここでは少し影が薄い気がしてくる。
 二機とも新品だが、基本デザインは日本グランプリの時とほぼ同じ。
 ジェロニモが、翼を生やした亀の顔を、牙を生やした猛禽類の顔つきに描き直してくれたことがせめてもの救い。
 翼の色も、白からコウモリのような黒になり、悪魔の羽みたいだ。