ドローンレーサー

 ある意味、儲けるためにはそれが正解であった。
 ドローンレースは、マニュアル操縦が必要な命がけのレース。
 儲けるよりも、「相手に勝つ」という、その名誉だけに純粋に情熱を燃やす、意地と意地のぶつかりあいなのだ。
 パドックのセンターは、「G Forrari GTO SS」。
 ホォラーリとグールルがタッグを組んで作ったレーシングドローン、GTOスプリントスペチアーレ。狩田が乗っていたのは、それをデ・チューンして、スピードが出過ぎないようにした市販タイプだ。
 下半分は黒いカーボンボディ。ボディ上部にだけ深紅の塗装をしてあるので、別名「赤い頭、テスタロッサ」と呼ばれていた。
 超小型の十二発プロペラ。ドデカコアタイプの超高速回転型モーターを採用し、「キーン」という、耳をつんざくような甲高い高周波音を出す。
 跳ね馬に白い羽が生えた、ペガサスのエンブレムが鮮やかだ。
 隣は、車時代からホォラーリに対して憎悪に似た闘志を燃やすランボルジニナリーネ。
 農機具のトラクターを製作していたランボルジニナリーネが、ホォラーリに車の作り方を教えてもらいに行った時に、どん百姓呼ばわりされ、馬鹿にされたことが因縁だった。
 カーレースでは太刀打ち出来なかったランボルジニナリーネの怨念を今、空のレースで晴らそうと執念を燃やしている。
 ホォラーリより二発プロペラが多い、テトラデカコプター、十四発だ。カタログスペック上、少しでもホォラーリより優位でなければ気がすまないのは昔と同じ。
 暴れる闘牛に、羽を生やしたマークを付けているが、このドローンの名前は、「ランボルジニナリーネ・チータRS、レーシングスペシャル」。
 世界一の俊足動物、チータからつけた名前だ。普通、ドローンは真上から見ると、左右対称に出来ている。クワッドは正方形、ヘキサは正六角形、オクトは正八角形の隅にプロペラが付けてある。それが理想バランスだからだ。
 しかし、チータは、上から見ると長方形になっている。空気抵抗を減らすためだ。でも、それでは旋回性能が落ちる。そこで採用されたのが、フレキシブルフレームボディ。
 機体全体が、ネコ科の動物のように、しなやかに曲がって旋回していく驚きのアイデアだった。そのこともあってランボルジニナリーネ・チータと名付けられた。