ドローンレーサー

 村八ファンドの代表には、狩田がマーライオンの所でスカウトした、役立たずの四流モデルを紹介したら大喜びで、シンガポールの不動産まで面倒をみてくれた。
 日本の淡路島くらいの大きさしかない小さな国シンガポールは、世界最先端の、ど田舎。
 つまり、コネとカネのムラ社会。不動産さえ持てば将来必ず値上がりする。
 狩田は村八ファンドのおかげで、セントーサ島に、小ぶりながら、一軒家とクルーザーを所有した。日本に帰ると厳しい課税が待っている。シンガポールはタックスヘブンなのでほぼ無税だが、狩田はすることもなく、毎日、退屈で死にそうだった。
 パソコンを見つめて、株や不動産の値上がりに一喜一憂する毎日にもうんざりしていた。
 暇を持て余し、若い愛人を誘ってマリーナベイ・サンズリホテルのカジノで遊んでいたが、そんなことにも飽き、プールサイドで、ピーチバレーズのオリンピックスタジアム公演をスマホで観ていたのだ。
 5Gが始まって、大リーグもサッカーも、ほぼリアルタイムでストレスなく観れる。
 シンガポールと日本の時差は一時間と決められているが、実際の経度差は約三十度。
 ピーチバレーズの公演が始まる夕方頃、シンガポールは、まだ、全然明るい。
「俺が昔、というか未来でスカウトした少女たちが、日本でメジャーデビューするのさ」
 狩田はあくびをしながら退屈そうに言った。
「未来でスカウトォ? 何言ってんのぉ、バッカじゃないのぉ? ねえ~、そろそろ、下のお部屋に行ってぇ~、その後でぇ~お買い物いきましょ! ネ、ネ、ネ~ェったらぁ~」
「おいおい、ちょっと待ってくれよ、ジェセフィーヌ、明日じゃだめなのか?」
「もうぉ~、まだおじいちゃんじゃあないんだからぁ~、もっと元気出してよぉ~」
 ジョセフィーヌという名前のその女は、自分ではフランス系のハーフだと言う。
 しかし、ラテンの血の栄養分は、すべてオッパイに集中してしまったのか、どこからみても純粋な中華風の顔をしている。スタイルはいいが、顔がおブスな典型的SGPガール。
 ジョセフィーヌはプリプリとヒスを起こし、狩田の手を引っ張る。