ドローンレーサー

「オラぁ今まで、『アイドルは手が届がねえ存在だからごそ神』って言葉に、ズッ友であり続けるすかねえのだと思ってた。すかす、オラぁあんなヲタの奴らとは格が違う。オラぁ最古参だぁ。メンバーのことを懸命に守るオラ。今はカンちゃんだけじゃねぇ。メンバーみんなを平等に誰よりも愛すてる。ごれは運営になったオラの義務だぁ。ごんなオラのごとをメンバーはガッゴエエと感じ、ガツ恋に落ちてすまう者もいるだろう。すうなったらす方がね。すの時は、社長に土下座をすてでも許すてもらおう。額を地面にごすりつけて社長にお願げぇするオラの姿に、メンバーは感動の涙を流すながら、オラとの結婚を夢見て卒業すてぐれるだろう」
 窓を閉めると、再び吐く息がだんだん荒くなってメガネが曇る。フトシはメガネを外し、ハンカチでメガネを拭くついでに、顔じゅうに吹き出した汗をぬぐう。
 ハンカツはずんぶ濡れだった。

 未来  香港 ペニスシュワホテル  

 昔は百万ドルだったらしいが、中国が世界一の経済大国となった未来の香港では、今や、このビクトリア・ハーバー沿いから見える景色は、一億ドルの夜景と呼ばれている。
 俺は今、その一億ドルの夜景が見渡せる香港の最高級ホテル、ペニスシュワのスイートルームに寝転がっている。
 キングサイズベッドに寝転ぶ裸の美女は、小柄だが超巨乳の日本人女性で、スズキンの契約ドローンレーサーだった秋子だ。日本グランプリで、「SUZUKIN Mosquito AKIKO」と書かれたヘルメットを小脇に抱えていた俺より四、五歳年上の、あの女。
 あのレースで負けてから、秋子は優勝した俺に憧れ、あの後「TURTLE DRONE MOTORS」の門を叩いたのだった。
 俺が疾走してしまっていたので、亀爺さんは俺の代わりに彼女を雇う。しかし、俺が戻ってきたので、彼女がコ・パイロットとなって二機体制で出場することになった。
 車のFー1グランプリと同じく二台の方が圧倒的に有利なのだ。
 「TURTLE DRONE MOTORS」には、日本グランプリで俺が勝った、莫大な額の優勝賞金が入り、その上、スポンサー企業もたくさんついたから、二機体制に出来た。
 もちろん俺がファーストで、秋子がセカンドパイロット。