「昨夜のことはポーラ姉さんから聞いたわ。スバルさんとポーラさんが、おじさんと姪の関係だなんて、びっくりだわ。初めは信じられなかったけど、ポーラさんがいつもしているペンダントロケットの中を見せてくれたの。それにはポーラさんとよく似た綺麗なお母さんが赤ちゃんを抱っこしている写真だった。小さくて見えにくかったけど、赤ちゃんには、はっきりと、ポーラさんと同じホクロが、右目の下に五個あったわ。ねえ、スバルさん、今、妹さんの写真ある?」
俺はスマホをスクロールして、最近撮った乙女の写真を見せた。
「あ、間違いない。あのお母さんだ。そっくりだし、ホクロの場所まで同じだ」
レイワは安心したように助手席の背もたれに体重をかけた。
そういえば乙女も、ソバカスとホクロが多かった。
「ねえ、ポーラさんと、東京タワーに行ったことがあるでしょ。私も連れてって。今すぐ」
「え? そんなこと言われても……」
俺は地下ガレージから出たところにいる警備員と、その先にいる出待ちのヲタたちを指差した。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
レイワはそう言いながら、キャップを目深に被り、サングラスをしてマスクをつけると、後席に移動し、寝転んで隠れた。
「早く! 時間がないからっ!」
俺は言われるがまま、慌てて車を出す。警備員も、ヲタたちも気がついている様子はなかった。そりゃそうだ。こんな二十五年前のポンコツに、売れっ子アイドルが乗っているとは、お釈迦様でも思わないだろう。
表参道を直進し、青山通りを横切って、フロムファーストを右手に見ながら、根津美術館の細い脇道まで来ると、後席に居たレイワが体を起こし、後方を確認しながら、助手席に移動してくる。
細い路地から西麻布の交差点に出ると、警官が立っていた。
「やっべ!」
そう言うと、レイワは慌ててシートベルトをする。ベルトがレイワの大きな胸の谷間にくい込んで、俺はドキッとした。
ポーラと来た時と同じく平日の夕方なので、東京タワーのお客はまばらだった。
「大阪タワーにもアベノハルカスにも行ったことがないし、通天閣すら登ったことないわ」
「え? 大阪タワーって?」
「大阪に出来た、スカイツリーより高いタワーよ。知らないの? 私も知ってはいるけど、いつも見上げてばかりで行ったことがないわ」
と、レイワは無邪気に笑う。
俺はスマホをスクロールして、最近撮った乙女の写真を見せた。
「あ、間違いない。あのお母さんだ。そっくりだし、ホクロの場所まで同じだ」
レイワは安心したように助手席の背もたれに体重をかけた。
そういえば乙女も、ソバカスとホクロが多かった。
「ねえ、ポーラさんと、東京タワーに行ったことがあるでしょ。私も連れてって。今すぐ」
「え? そんなこと言われても……」
俺は地下ガレージから出たところにいる警備員と、その先にいる出待ちのヲタたちを指差した。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
レイワはそう言いながら、キャップを目深に被り、サングラスをしてマスクをつけると、後席に移動し、寝転んで隠れた。
「早く! 時間がないからっ!」
俺は言われるがまま、慌てて車を出す。警備員も、ヲタたちも気がついている様子はなかった。そりゃそうだ。こんな二十五年前のポンコツに、売れっ子アイドルが乗っているとは、お釈迦様でも思わないだろう。
表参道を直進し、青山通りを横切って、フロムファーストを右手に見ながら、根津美術館の細い脇道まで来ると、後席に居たレイワが体を起こし、後方を確認しながら、助手席に移動してくる。
細い路地から西麻布の交差点に出ると、警官が立っていた。
「やっべ!」
そう言うと、レイワは慌ててシートベルトをする。ベルトがレイワの大きな胸の谷間にくい込んで、俺はドキッとした。
ポーラと来た時と同じく平日の夕方なので、東京タワーのお客はまばらだった。
「大阪タワーにもアベノハルカスにも行ったことがないし、通天閣すら登ったことないわ」
「え? 大阪タワーって?」
「大阪に出来た、スカイツリーより高いタワーよ。知らないの? 私も知ってはいるけど、いつも見上げてばかりで行ったことがないわ」
と、レイワは無邪気に笑う。
