ドローンレーサー

 ポーラの右目の下にあった五個のホクロが「W」に見えた。
「げっ! カシオペア座だ!」
 俺は逆さまにポーラの顔を覗き込んだ。
 ポーラは、いつもぶら下げているペンダントの大きなロケットを首元からずらす。
 そこには、カシオペア座からの位置関係で、北の夜空に浮かぶ、北極星のようなホクロがあった。
「げげっ! 北極星だ!」
 ポーラは目を閉じて、タンクトップを下からめくり上げた。大きなバストが露わになると俺は息を飲んだ。ポーラの左胸には五個のホクロが散らばっている。乳首の両脇に、一個ずつ。あとの三つは、ほぼ直線上に、みぞおちの方に向かって並んでいた。
「見て……」
 ポーラが目を閉じたまま、手探りで左の乳房を上に持ち上げた。大きな乳房の重みで隠れていた残りのホクロ二個が現れた。俺は身を乗り出して凝視する。触れるか触れないかギリギリのあたりで、ホクロを一個一個、確認してゆく。
「いち、に、さん、よん、ごお、ろく、なな、ななな、な、七個だ、七個ある!」
 乳首から出た母乳を受け止めるように、北斗七星の柄杓(ひしゃく)のカップがあった。
「キャーッ!」ガラガラガラガッシャーン!
 開けっ放しの応接室のドアにレイワが立っていた、レイワが俺のために、トレイで運んできた夜食をひっくり返したのだ。
 レイワは後ずさりをして、そのまま階段を駆け下りていった。
 無理もない。俺は、上半身裸のポーラのオッパイにしゃぶりつきそうな体勢だったのだ。しかも俺は、シャワー直後の濡れた髪の毛のまま。
 69の格好。
 ポーラはすぐにタンクトップを下げ、ジャージの上着をひっつかんで駆け出し、階段を下りていった。
 
 あくる日の夕方、いつものように青山通り沿いにあるスーパー火の国屋に買い出しに行こうとしていたら、レイワが駆け寄って来て、地下ガレージに停めてあった俺のRV4に強引に乗り込んできた。