あっま~。

 ラミネートされたメニュー表に貼られた写真のものよりも生クリームがたっぷりと乗せられたワッフルをフォークで刺しながら香は隣の机に座る校閲部の三人と小野の話に聞き耳を立てた。
 小野の正面に座る満が優しく微笑む。

「それで、何を校閲してほしいのかな?」
「来週の生徒会長選挙で読む演説原稿の校閲をお願いしたい」

 小野は手書きの原稿を差し出す。
 香はこっそりと立ち上がり、三人の後ろから原稿を覗き見る。

『この度、生徒会会長に立候補しました、二年三組、小野優斗です。

 私は一年間、生徒会役員として様々な活動に取り組できました。
 朝のあいさつ運動や、校内の見回り、学校行事の手伝いなど役員としての  仕事を通して清開高校の生徒がより良い学校生活を送れるようにしたいと思うようになりました。

(未定)

 僕なんかに生徒会長は役不足だと思う方もいるかもしれません。
 しかし、一世一代の覚悟で挑む所存です。

 どうか僕にこの清開高校を任せて欲しいです。
 皆様の清き一票をよろしくおねがいいたします。』

 途中まで読み進め、ん? と香は首をひねる。

「この未定って?」
「そこにはマニュフェストを入れるか、他のことを書こうかまだ悩んでいるんだ」
「わかった、決まり次第教えてくれ」
「いや、そこの部分は大丈夫」
「……わかった」

 申し出を断られたが、冬木は素直に引き下がり、すぐに視線を原稿に戻した。

「小野先輩、選挙に出るんだ。でも……」

 その後の言葉を言い淀むと、小野は香の言いたいことを汲んで黙ってうなずく。

「わかってる。柊さんのことだろう」

 柊さん、とは小野と同じく生徒会に所属する高校二年生、柊霧子のことだ。
 彼女は成績優秀で品行方正だが、性格はその名の通り柊の葉のごとくトゲトゲしており、彼女に近づくものは誰もいない。

 しかし、次の生徒会長は柊さんで決まりだろうと全校生徒誰しも思っている。

 それは彼女が優秀な生徒だから、という理由以上に彼女の父親は市の教育委員会の教育長であり、彼女は日頃から先生たちに贔屓をされていると噂されているからだ。
 柊霧子が生徒会長になりたいというのなら、たとえ選挙を行ったとしても先生たちが手を加え当選させるのだろう。