生徒会選挙が行われて数日が経った日の夜。
 香たちは宇治満の実家である喫茶・朝日館で選挙演説の校閲の打ち上げをしていた。机に並ぶ朝日館自慢の焼きそばやジュースたちを前に光輝と香は騒ぎ、冬木は黙ってジュースを飲み干す。

 そこで満は校閲部からの引退を宣言。
 香が柊に言った言葉に感銘を受け、もう一度きちんと父親と話し合いをすること、そしてやりたいことである小説を書くために文学部がある大学への受験を決意。そのためにも受験勉強に専念するために校閲部の仕事を退くことに決めた。

 満の宣言に、ピザを咥えたまま光輝が嘆く。

「えー宇治先輩が校閲部じゃなくなったらもうここ来れないじゃん」
「おい、宇治先輩に失礼だろ」

 冬木は光輝の肩を軽く殴るが、光輝は止まらない。

「いやでも実際、部長いないし部室ないし、ますます部活動への道は遠のいたな」
「その話なんだけど、部長を引き継ごうと思って」

 満からの視線を受け取り、香は静々と満の隣へ移動する。

「校閲部二代目部長、彩田香です!」

 突然の発表に「はぁ?!」と冬木と光輝は声を揃える。

「マジで? サイコーちゃん部長なの?!」
 騒ぐ光輝。
「待ってくださいよ。なんで俺たちのどちらかじゃなくてこいつが部長なんですか?!」 
 怒る冬木。
「目上の人には敬語使え。我部長なり」
 調子にのる香。
「そもそも校閲部は部活じゃないだろ。部長って言ったってそんなものただの飾りだ」

 香に負けじと意地をはる冬木は先代の部長である満の前でそう言いのける。

「お前も結構失礼よ」

 光輝のツッコミも冬木の耳には届いていない。
 しかし香は冬木の言葉を待ってましたと言わんばかりに、懐から生徒会から承認の印が押された校閲部の部活申請書を見せつける。

「校閲部はすでに清開高校の正式な部活になりました!」
「マジで?! ということは予算もー?!」
「あ、予算はまだ、秋の生徒総会で来年度の予算審査があるからその時に決まると思う」

 そっか、と落ち着きを取り戻す光輝。
 香は生徒会選挙が終わった直後、満から校閲部の部長を頼まれた時から、小野に正式な手続きを踏み、校閲部を正式な部活とした。
 しかし、冬木はまだ眉根を寄せている。

「いや、部員が三人いても、顧問の先生がいなくちゃ生徒会から承認されないはずだろ?」