「あの日、生徒会室で見回りの時に体育館裏に来て欲しいと告げお前は帰ったふりをして体育館の裏で待っていた。そして、やってきた柊に校閲部のことを伝えた。フェアな勝負にするために彼女にも校閲部による校閲を受けて欲しいと。
 了承した柊は校閲部に向かうべく下校。その後、お前がタバコの吸い殻を置き、それを光輝が発見した」

 冬木の推理を聞き、小野ははっ、と噴き出す。

「ちょっと待てよ。柊が帰って校閲部の奴らが体育館裏に来たなら、俺はいつそこから離れたんだよ。おかしいだろ」
「おかしくない。お前は体育館の東側の扉から帰ったんだ」
「あそこの扉はもともと開いてないだろ」

 勝ち誇ったように語る小野に対し、冬木は光輝から受け取った生徒会の校内の見回りの順路図と当番表の写真を見せる。柊が体育館周辺の巡回を担当していた前日、体育館の中を巡回する担当の欄に小野の名前が書かれていた。
 そのほか、人目につきにくい箇所の巡回を柊が担当している日は、小野は巡回の当番から外れていた。柊が巡回を終わらせて帰った後にタバコの吸殻を置くために。

「校内の見回りの順路と当番表を見せてもらった。前日、お前は校内の見回りで体育館の中を担当している。その時に扉の鍵を開けておいたんだ。
 本来なら鍵を閉めて帰るつもりだったが光輝たちの足音が聞こえ、鍵をかける音を聞かれないようにそのまま帰った」
「そんなのお前の妄想だろ……」

 冬木は小野の言葉を遮るように深いため息をつく。

「はぁーあ。やっぱすっげぇ嫌だな。あいつに力借りるの。でもしょうがないよな」
「何言ってんだよ」

 冬木はポケットから紙の束を取り出し、机に並べ始める。
 それは私服姿でマスクをした小野が周囲を警戒しながら町のいろんな喫煙所からタバコの吸い殻を拾い取る姿。
 そして柊が見回りを済ませた後にタバコの吸い殻をおく小野の盗撮写真だった。中には体育館裏で自分のポケットからタバコの吸殻を取り出し、地面に捨てる小野の姿が脳天から収められていた。伽耶響は小野を張っていて、後からやってきた光輝と香の写真もついでに写真に納めたのだった。

 写真に写る自分の姿に、小野は言葉を失う。

「人前に立つんだったら、目の前の観衆よりも背後を狙うたった一人に気 をつけろ」

 小野は背中に悪寒が走り、後ろを振り返るがそこには誰もいない。