「そうなの? だって昨日光輝くんと一緒に何かしていたんじゃないの?」

 そう言って響は床に散らばった資料の中から一枚の写真を掲げる。そこには昨日、光輝とともに体育館の裏にいる香の姿が写っていた。アングルから見て体育館の二階から撮っていたものと思われる。

「憶測だけで物事を語るな。だからお前は間違えるんだ」
「間違えたのは君もだろ?」

 冬木がイラつくほど、響の声は楽しそうに弾む。
 そんな二人の関係性がわからず香は戸惑っていると光輝がコソコソと耳打ちで事情を説明する。

「彼女は伽耶響。俺たちと同じ二年生で、新聞部」

 それから光輝は一年前の話を語り出す。

 新聞部の部員数は冬木と光輝、そして響を含めて十名だった。二人一組のコンビを五つ作り、それぞれが毎週決まった曜日に新聞を発行する。掲示板には毎日違う学校新聞を貼られるという仕組みだった。そして夏休みを境に前期と後期にコンビは組み替えられるという決まりだ。

 光輝と冬木は一年生の頃に前期でコンビを組み毎週新聞を発行しており、二人が手がける学校新聞はそれなりに人気だったらしい。

「俺ら昔からいいコンビだったのよ。だけどね……」

 後期になり冬木は響とチームを組んだ。響は光輝に負けない行動派で度胸とスクープ魂を持っていた。正確かつわかりやすい文章を書く冬木と組み、発行される新聞は光輝と組んだ前期以上の人気を得た。
 ある時、冬木と響はとあるクラスのいじめ問題に切り込んだ。

 陰湿ないじめて?教師は気づかない。だから新聞で告発してほしい。

 いじめられていた女子生徒Aからの告発を受け、冬木と響は正義感を燃やし、いじめの主犯である女子生徒Bについて学校新聞に大々的に報じた。
 学校新聞は未だかつてないほどの注目を浴び、B は非難の嵐にあった。
 しかし、新聞が発行され晴れ晴れとした表情を浮かべるAに対し疑問を抱いた冬木が詳しく調査をするといじめ自体が存在しないということが発覚した。

「最初になんか怪しくね? って言ったのは俺なんだけどね」
「自慢はいいから早く続けて」
「サイコーちゃん、俺にあたりキツくね?」

 嘘のいじめ告発は色恋沙汰で B に恨みを持った A による復讐だった。