でも快く、の部分はやっぱり嘘だろうな。生徒会の人は絶対訳が分からず光輝先輩の勢いに負けて渡しちゃったんだと思う。今現在、光輝とともに動いているからこそ余計に名前も知らない生徒会役員の気持ちが痛いほどわかった。

「はい、いくよ」
「……はーい、って。その前に靴履いてください」

 その後も、見回り図を見ながら柊が担当した箇所を巡ると必ず人目につきにくいところにタバコの吸い殻が落ちていた。
 四本目の吸い殻をポケットに入れ、柊の担当箇所を全て回り終えた光輝はよし、と小さく頷く。

「とりあえず部室に戻ろうか」
「部室?」

 光輝は潰れたかかとを人指し指で直し、つま先で地面を叩いて靴を履き直す。

「宇治先輩んち。あの喫茶店のことだよ」