「次の休暇に実家に帰るんだ……その……君も一緒に来ないか?」

「えっ? 先輩のご実家ですか……?」

「ああ……」

 エリスは、ルードヴィッヒの真意を理解しかねた。

 この学校の決まりでは、お互いの身の上について言及するのは不可とされている。

 生徒会長であり、最高学年に在籍しているルードヴィッヒがこのことを知らないはずがない。

 それなのに、実家に来いとはどういうことなのか?

 即答はしなかった。しかし、よく考えた上で答えたとしても、答えは〈ノー〉だ。

 黙り込んでしまったエリスを見て、ルードヴィッヒは困った顔をした。

「あの、せっかくのお誘いですが……」

 いつまでも沈黙しているわけにはいかず、エリスは口を開いた。

「……変に誤解されていたら困る。わかった、率直に言おう。エリス・スチュアート、俺と一緒に来て欲しい、婚約者として――」




 今度こそ本当に絶句した。あまりに予想外のことに、エリスは言葉が出なかった。

 冗談かとも思ったが、今までの会話の流れや、ルードヴィッヒの表情からとても冗談を言っているとは思えない。

 言葉のまま受け取っていいのだろうか?――エリスは戸惑った。

「君が、目的をもってこの学校にやって来たことはわかっている。将来の王妃として大切に育てられた令嬢が、男の格好をして、たった一人で男子校に乗り込んで来たんだ。君が背負っているものは相当なものだろう。だが、それは、俺と結婚しても解決しないことなのか?」

「それは……」

 エリスは言葉に詰まった。

「ご両親と妹君のことか? だったら心配することはない。ご両親には爵位と領土を。そして、妹君には王妃の妹にふさわしい嫁ぎ先を用意しよう」