「最近、随分と生徒会長と仲がよろしいんですね」

「えっ、ええ……仲良くならないと情報を引き出せないでしょう?」

「まあ、そうですが。お分かりになっていると思いますが、くれぐれも親しくなり過ぎて、余計なことをお話にならないよう――」

「生徒会があるからもう行かないと!」

 クロードが最後まで言い終わらない内に、エリスは逃げるようにして、部屋を出た。

 もうすでにルードヴィッヒに、女性であることを知られていると知ったら、クロードはどんな顔をするのだろうか――エリスは、クロードを裏切りつつある後ろめたさを感じていた。




 今日、エリスは書庫の掃除と整理をする仕事を言いつけられていた。

 生徒会には多くの本が保管されている。学校史をはじめ、生徒たちの文集、課外授業のしおりに至るまで――学校に関係するありとあらゆる本がそこにはあった。

 エリスが学校史の棚を整理をしているときのことであった。

(さすがに歴史のある名門校は違うわ……。学校の歴史について書かれている本だけで、かなりの冊数がある……)

 エリスは、本の背表紙を眺めながら、本棚の端から端を歩いた。

 すると、異様な雰囲気を放っている棚が目についた。

(ここにある本は一体……) 

 その棚にある本はみな古ぼけていて、ちょっと触れただけで朽ち果ててしまいそうだった。しかし、どれも見るからに希少価値がありそうな感じがする本でもあった。

 エリスはおそるおそるその中の一冊に手を伸ばしていた。好奇心からではない。無意識のうちに、知らず知らずのうちに手を伸ばしていたのだ。

「それは魔導書だ」




 背後から話しかけられ、エリスが後ろを振り向くと、そこにはルードヴィッヒが立っていた。

「先輩……!」

「驚かせてしまったか?」

「いえ……大丈夫です」

 ルードヴィッヒと二人きりになるのは、一緒に出掛けた日以来のことだった。

 あの日のことを、特に別れ際のやり取りを思い出すと、ルードヴィッヒの顔をまともに見ることができない。

「この学校の成り立ちを知っているか」

 エリスの心中を知ってか知らずか、ルードヴィッヒは唐突に問いかけた。 

「あ、はい。確か……将来、国を担うような人材育成を目的として創られた学校だと……」

 エリスは、クロードから受けた説明の通りに答えた。

「そう、その通りだ。表向きはな」

「表向き?」

「ああ、ここの前身は魔導の研究所だ」