「よほど君のことが怖いらしい。今のうちに潰しておきたいんだろうね」

「潰す……? ただ単に嫌がらせをしたいだけではないの? 流石に披露会の場を使って嫌がらせを仕掛けてくるのは、やり過ぎではないかと思うけれど」

「いいや」

 ロイは大きく首を振った。

「君はそのうち生徒会の役員になる可能性がある。たとえ披露会に出なくってもね」

「僕が? 生徒会に? どうして?」

 意外すぎるロイの言葉に、エリスは疑問しか浮かばなかった。

「だって君はルーイ兄さまのお気に入りじゃないか」

「お気に入りってほどじゃ……」

「君はそう言うかもしれないけど、周りにはそう見えている。実際に僕にもそう見える」

「仮に、先輩に誘われても、生徒会に入るかどうかはわからない……」

 本音であった。エリスは、自分の立場を理解していた。自分は本来、この場所にいるべき人間ではない。そして、いつまでこの場所にいられるか、全く不透明な状況にあることを――。

「アーサー! 自分が何を言っているのかわかってる?」

 バンっ、と大きな音がするほど、両手で机を強く叩くのと同時に、ロイが勢いよく立ち上がった。 




 一瞬、ビクっとした後、エリスはこわごわとロイの顔を覗き込んだ。

「ごめん。つい、興奮しちゃった」

 ロイが座り直すと、エリスは、ふと疑問に思ったことを口にした。

「この学校の生徒会には、何があるの? さっきから君を見ていると、この学校の生徒会は、単なる生徒たちの組織ではないような気がする」

「……この学校の生徒会の役員をやったってことは、将来、いや、一生涯役に立つと言われている」

 一呼吸おいて、ロイは語り始めた。

「人脈とかね」

「人脈? この学校では、自分の身分について明かすのは禁止されているはずでは?」

「それは在校中の時だけだよ。卒業したら関係ない。卒業後にどこかの上流階級の集まりで、元クラスメイト同士が久々に再会した、なんてよくある話さ」ロイは続ける。「まあ、普通の生徒同士はこんな感じなんだけど、生徒会は生徒会で卒業後に別の集まりがある」

「もしかして、それが人脈の正体?」

「そう。その集まりに行くとね、すごいんだって。錚々たる顔ぶれらしい。話によると、どこかの国の王様もいるとか!」

「生徒会のメンバーに選ばれたということ自体が、エリートの証ということ……?」

「そういうことになるね。学業が優秀なことはもちろんだけど、家柄ももちろん選考基準に入っているんだろうなあ。僕には縁のない話だ……」