ハーバート侯爵夫人は、調査結果をすぐにエリスに知らせてくれた。
侯爵家に嫁いでもうかなりの時間が経っているはずだが、王家への影響力はまだ衰えておらず、宮殿内にも協力者が数多くいるようだ。
ハーバート侯爵夫人の調査結果によると、やはりエドワードは、宮殿内に女性を匿い、面倒を見ていた。
女性の名は『ジャンヌ』。マーガレットに聞いた通り、エドワードが街で出会った娼婦と同一人物のようであった。
そして、調査結果の最後は、エリスにとって、決して見過ごすことのできないことで締められていた。
エリスは、調査結果を読み終わるや否や、メアリーを呼んだ。
「次の宮殿での講義だけど、午後に変更してもらえるように伝えてもらえないかしら?」
「次の講義と言うと……テーラー先生の講義でしょうか?」
「そう、もうすぐテーラー先生のお誕生日だから、宮殿に行く前に街に寄ってお花でも買っていこうかと思って。テーラー先生はお花がお好きだから」
「それは素敵ですね! だったら、お花の注文もしておいた方がよろしいですね」
「そうね。お願いするわ」
エリスは胸を撫でおろした。テーラー夫人の誕生日という格好が口実があったおかげで、メアリーに怪しまれずに済んだ。
あとは、当日を待つばかりである。
エリスは予定よりも早めに宮殿に到着すると、講義室に入った。テーラー夫人がまだ来ていないことを確認すると、荷物を置いて室外に出た。
エリスが向かったのは、中庭である。
(ここは昔と変わっていないわね……)
エリスが一人で中庭に来るのは、これが初めてであった。
幼い頃からいつもここに来るときは、エドワードが一緒だった。ここは、エリスとエドワードにとって特別な場所だったのである。
エリスが幼少期の思い出に思いを馳せていると、向こうから二人分の足音が聞こえてきた。
「エリス! どうしてこんなところにいるんだ」
そこには非常に驚いている様子のエドワードがいた。それもそのはず、エリスがこの時間に宮殿にいることはありえなかったからだ。
「講義の時間が変更になったのです。エドワード様こそ……その方はどなたですか?」
エリスは、エドワードの背後に隠れるように、身を縮めている女を見た――おそらく、この女が娼婦の『ジャンヌ』だろう。娼婦というから、下品で毒々しく図々しい女かと思っていたが、この女はどうだろう? エリスが抱いている娼婦のイメージとは全く逆だった。弱々しく、まるで庇護がなければ生きられない少女のようであった。
「この人の名前はジャンヌ。訳あって宮殿で面倒を見ている」
侯爵家に嫁いでもうかなりの時間が経っているはずだが、王家への影響力はまだ衰えておらず、宮殿内にも協力者が数多くいるようだ。
ハーバート侯爵夫人の調査結果によると、やはりエドワードは、宮殿内に女性を匿い、面倒を見ていた。
女性の名は『ジャンヌ』。マーガレットに聞いた通り、エドワードが街で出会った娼婦と同一人物のようであった。
そして、調査結果の最後は、エリスにとって、決して見過ごすことのできないことで締められていた。
エリスは、調査結果を読み終わるや否や、メアリーを呼んだ。
「次の宮殿での講義だけど、午後に変更してもらえるように伝えてもらえないかしら?」
「次の講義と言うと……テーラー先生の講義でしょうか?」
「そう、もうすぐテーラー先生のお誕生日だから、宮殿に行く前に街に寄ってお花でも買っていこうかと思って。テーラー先生はお花がお好きだから」
「それは素敵ですね! だったら、お花の注文もしておいた方がよろしいですね」
「そうね。お願いするわ」
エリスは胸を撫でおろした。テーラー夫人の誕生日という格好が口実があったおかげで、メアリーに怪しまれずに済んだ。
あとは、当日を待つばかりである。
エリスは予定よりも早めに宮殿に到着すると、講義室に入った。テーラー夫人がまだ来ていないことを確認すると、荷物を置いて室外に出た。
エリスが向かったのは、中庭である。
(ここは昔と変わっていないわね……)
エリスが一人で中庭に来るのは、これが初めてであった。
幼い頃からいつもここに来るときは、エドワードが一緒だった。ここは、エリスとエドワードにとって特別な場所だったのである。
エリスが幼少期の思い出に思いを馳せていると、向こうから二人分の足音が聞こえてきた。
「エリス! どうしてこんなところにいるんだ」
そこには非常に驚いている様子のエドワードがいた。それもそのはず、エリスがこの時間に宮殿にいることはありえなかったからだ。
「講義の時間が変更になったのです。エドワード様こそ……その方はどなたですか?」
エリスは、エドワードの背後に隠れるように、身を縮めている女を見た――おそらく、この女が娼婦の『ジャンヌ』だろう。娼婦というから、下品で毒々しく図々しい女かと思っていたが、この女はどうだろう? エリスが抱いている娼婦のイメージとは全く逆だった。弱々しく、まるで庇護がなければ生きられない少女のようであった。
「この人の名前はジャンヌ。訳あって宮殿で面倒を見ている」