「ルーイ兄さまに伝説の生徒会長か……、ロイがあんなに夢中になっているルーイ兄さまってどんな人なんだろう?」

 エリスは、クロードの意見を求めた。

「どうしたの、クロード?」

 クロードは、顎に指をあてて、何やら考え事をしている。

「もしかすると、そのルーイという生徒会長……ジョナサン王子の失踪に関して何か知っているかも知れません」

「それは本当?」

 エリスは驚きのあまり、勢いよく椅子から立ち上がってしまった。

「ええ、確か、ジョナサン王子のご学友に『ルードヴィッヒ』という名の生徒がいたはずです」

「手掛かりは名前だけ? 単に名前が同じだけなのかも、偽名かも知れない」

「生徒名簿を調べてみましたが、『ルードヴィッヒ』という名の生徒は一人だけでした。偽名を使っている可能性も無きにしも非ずですが、すでに名前がわかっている以上、生徒会長にあたってみるのが得策でしょう」

「そうだね……」

「まず最初にやるべきは、その生徒会長の信頼を得ることです」

 エリスは一気に憂鬱になった。

「ごく普通の生徒が、上級生で、なおかつ生徒会長の立場にある人に近づくなんて、できると思う?」

「ロイ様に相談してみてはいかがですか? お話を聞く限り、かなりこの学校の情報に精通されているみたいですから」



 次の日、エリスはいつ生徒会長のことをロイに切り出そうかと、機会をうかがっていた。

 しかし、残念なことに、その機会はなかなか訪れず、とうとう下校時間を迎えてしまった。

(この広い敷地内で、そう簡単に生徒会長と遭遇しないわよね。それに……そういえば私、生徒会長がどんな外見をしているのか知らなかった……!)

「ねえ、ロイ。もし良かったら、この後遊びに来ない? もっと学校のことを教えて欲しいんだ。クロードが紅茶とお菓子を用意してくれるって」

「わあ、嬉しい! 今日も行ってもいいの?」

「ぜひ!」

 そんな会話を交わしながら、エリスとロイが出口に向かって歩いていると、何やら背後が騒がしくなってきた。

(今、……ルーイ兄さまって言ってなかった?)

 ざわめきの中から、エリスは確かにその人物の名前を聞いた。

「ルーイ兄さまだ!」

 今度はロイまでもがはっきりと叫び、エリスの腕を掴み、通路の端へと引っ張っていた。