今日からエリスの学校生活が始まる。
エリスは朝一番に校長室を訪ねた。校長から、学校生活についての説明を受けるためだ。
「そろそろ時間ですね」
校長がそう言うのと同時に、校長室のドアがノックされた。
「お入りなさい」
「はい、失礼します」
校長室に入ってきたのは、金色の巻き毛の小柄な少年であった。
「紹介します。彼の名前はロイ。学校生活でわからないことがあったら、彼に聞いてください。ロイ君、こちらが昨日お話ししたアーサー君です」
「よろしく」
エリスとロイは、握手を交わした。
(それにしても……このロイって子、ずいぶん幼く見えるけど、本当に同い年?)
「ロイ君、せっかくですので、アーサー君に校内を案内してあげてください」
「はい、校長先生」
エリスとロイはともに廊下に出た。
「ええっと……アーサー君?」
「アーサーでいいよ」
「じゃあ、僕のことはロイって呼んで」
「ああ、そうさせてもらう」
「君……特別室の人だよね?」
ロイがエリスにおそるおそる聞いてきた。
「特別室?」
「そう、最上階の特別室。すごいなあ、僕、特別室に入る人なんて初めて見たよ。しかも執事連れなんて」
「そんなに珍しいこと?」
「実は僕、この学校には9歳のときからいるんだけど、特別室を使っている人なんて見たことがない! 君の実家ってものすごいお金持ちなんだね……あっ!」
ロイは、慌てて口を押えた。どうやら言ってはいけないことを言ってしまったようであった。
「……?」
「ごめん、君のご実家のことは聞いちゃいけなかった」
「え……? それってどういう……」
「『生徒はみんな平等』、っていうのがこの学校のモットーなんだ。学校内では、自分の家柄や身分のことを絶対に話してはいけないんだ。もちろん、他の生徒にも聞いちゃいけない。名前を呼びあうときは、必ずファーストネームで、と決められている」
「そうなんだ……でも、この学校は名門校なんだから、それなりの身分の人も多くいそうだけど……」
「うん、いるよ。貴族どころか、王族もいるんじゃないかな」
「王族!?」
もしかして、ロイは、ジョナサン王子に繋がるような手がかりをもっているのだろうか? しかし、今日初めて会ったロイに根掘り葉掘り聞くのは気が引ける。
「王族に興味がある?」
「王族が、普通に学校生活を送っているかも知れないってことに驚いただけだよ。王族こそ特別室を使いそうなものだけど」
エリスは、笑ってごまかそうとした。
「でもね、ああいう人たちは、極力目立たないようにするんだ。ただでさえ目立つ存在だからね」
「じゃあ、僕は……」
「うん、相当目立っている。この学校で君のことを知らない人なんていないんじゃないかな? この時期に編入してきて、しかも特別室を使うなんて、あり得ないことなんだよ! 『大国の第一王子か、それとも、世界一の大富豪の一人息子か?』ってみんな君のことを噂しているんだ」
「ご想像にお任せするよ……」
初日からこんな悪目立ちをしてしまっていることに、エリスは、軽いめまいを覚えずにはいられなかった。
エリスは朝一番に校長室を訪ねた。校長から、学校生活についての説明を受けるためだ。
「そろそろ時間ですね」
校長がそう言うのと同時に、校長室のドアがノックされた。
「お入りなさい」
「はい、失礼します」
校長室に入ってきたのは、金色の巻き毛の小柄な少年であった。
「紹介します。彼の名前はロイ。学校生活でわからないことがあったら、彼に聞いてください。ロイ君、こちらが昨日お話ししたアーサー君です」
「よろしく」
エリスとロイは、握手を交わした。
(それにしても……このロイって子、ずいぶん幼く見えるけど、本当に同い年?)
「ロイ君、せっかくですので、アーサー君に校内を案内してあげてください」
「はい、校長先生」
エリスとロイはともに廊下に出た。
「ええっと……アーサー君?」
「アーサーでいいよ」
「じゃあ、僕のことはロイって呼んで」
「ああ、そうさせてもらう」
「君……特別室の人だよね?」
ロイがエリスにおそるおそる聞いてきた。
「特別室?」
「そう、最上階の特別室。すごいなあ、僕、特別室に入る人なんて初めて見たよ。しかも執事連れなんて」
「そんなに珍しいこと?」
「実は僕、この学校には9歳のときからいるんだけど、特別室を使っている人なんて見たことがない! 君の実家ってものすごいお金持ちなんだね……あっ!」
ロイは、慌てて口を押えた。どうやら言ってはいけないことを言ってしまったようであった。
「……?」
「ごめん、君のご実家のことは聞いちゃいけなかった」
「え……? それってどういう……」
「『生徒はみんな平等』、っていうのがこの学校のモットーなんだ。学校内では、自分の家柄や身分のことを絶対に話してはいけないんだ。もちろん、他の生徒にも聞いちゃいけない。名前を呼びあうときは、必ずファーストネームで、と決められている」
「そうなんだ……でも、この学校は名門校なんだから、それなりの身分の人も多くいそうだけど……」
「うん、いるよ。貴族どころか、王族もいるんじゃないかな」
「王族!?」
もしかして、ロイは、ジョナサン王子に繋がるような手がかりをもっているのだろうか? しかし、今日初めて会ったロイに根掘り葉掘り聞くのは気が引ける。
「王族に興味がある?」
「王族が、普通に学校生活を送っているかも知れないってことに驚いただけだよ。王族こそ特別室を使いそうなものだけど」
エリスは、笑ってごまかそうとした。
「でもね、ああいう人たちは、極力目立たないようにするんだ。ただでさえ目立つ存在だからね」
「じゃあ、僕は……」
「うん、相当目立っている。この学校で君のことを知らない人なんていないんじゃないかな? この時期に編入してきて、しかも特別室を使うなんて、あり得ないことなんだよ! 『大国の第一王子か、それとも、世界一の大富豪の一人息子か?』ってみんな君のことを噂しているんだ」
「ご想像にお任せするよ……」
初日からこんな悪目立ちをしてしまっていることに、エリスは、軽いめまいを覚えずにはいられなかった。