入ってきたのはエキゾチックな風貌の美しい青年であった。
身長はクロードと同じくらいだろうか。艶やかなゆるいウエーブがかった長めの黒髪を後ろで軽く結び、アメジスト色の瞳が褐色の肌によく映えている。
「彼はこの学校の在校生です」
教師が簡単に紹介すると、
「よろしく」
と青年がエリスに握手を求めた。
「あ……よ、よろしくお願い……します」
エリスは、おそるおそる青年へ手を差し出したが、顔を上げて青年の顔を直視することができなかった。それは、赤面した自分の顔を青年に見られたくなかったからでもあった。
(どうしよう……耳まで赤くなってるみたい……。おかしな子だと思われているかも……)
そう考えると、エリスは居ても立っても居られない気持ちになった。試験を放り出して、青年の前から走り去ってしまいたいくらいだった。
「アーサー君、試験を始めてもよろしいですか」
「は、はい……お願いします」
教師の言葉で、エリスは一旦、現実に引き戻された。
(集中しないと……!)
エリスは懸命に心を落ち着かせようとした。
しかし、目の前に青年がいるかと思うと、どうしても意識が青年の方に向かっていってしまう。
(一体、どうすればいいの?)
エリスは初めての感情に戸惑っていた。
(エドワードとの婚約が決まったときも嬉しかったけど、こんな気持ちになったことはなかった。それに胸がすごくどきどきしている……)
勝負は一瞬で決まった。
むしろ、勝負にならなかったと言った方が正しい。
「きゃっ」
教師の開始の合図が終わるや否や、エリスは剣を払い落された挙句、勢い余って尻もちをついてしまうという失態を犯した。
呆然として座り込んだままでいるエリスに、青年は近づいて手を差し伸べた。
「大丈夫? 怪我は?」
「だ、大丈夫です……」
青年は、エリスを引っ張り起こした。
「悪いね、剣は得意なんだ――それにしても、さっきの叫び声といい、線の細さといい、君は女の子みたいだな」
エリスはまたもや赤面し、恥ずかしさのあまり、うつむいたまま黙り込んでしまった。
そんなエリスの様子を見て青年は、
「気を悪くしてしまったかな。君の合格を心より願っているよ。また会おう、レディ」
とエリスに言い残し、講堂から出ていった。
身長はクロードと同じくらいだろうか。艶やかなゆるいウエーブがかった長めの黒髪を後ろで軽く結び、アメジスト色の瞳が褐色の肌によく映えている。
「彼はこの学校の在校生です」
教師が簡単に紹介すると、
「よろしく」
と青年がエリスに握手を求めた。
「あ……よ、よろしくお願い……します」
エリスは、おそるおそる青年へ手を差し出したが、顔を上げて青年の顔を直視することができなかった。それは、赤面した自分の顔を青年に見られたくなかったからでもあった。
(どうしよう……耳まで赤くなってるみたい……。おかしな子だと思われているかも……)
そう考えると、エリスは居ても立っても居られない気持ちになった。試験を放り出して、青年の前から走り去ってしまいたいくらいだった。
「アーサー君、試験を始めてもよろしいですか」
「は、はい……お願いします」
教師の言葉で、エリスは一旦、現実に引き戻された。
(集中しないと……!)
エリスは懸命に心を落ち着かせようとした。
しかし、目の前に青年がいるかと思うと、どうしても意識が青年の方に向かっていってしまう。
(一体、どうすればいいの?)
エリスは初めての感情に戸惑っていた。
(エドワードとの婚約が決まったときも嬉しかったけど、こんな気持ちになったことはなかった。それに胸がすごくどきどきしている……)
勝負は一瞬で決まった。
むしろ、勝負にならなかったと言った方が正しい。
「きゃっ」
教師の開始の合図が終わるや否や、エリスは剣を払い落された挙句、勢い余って尻もちをついてしまうという失態を犯した。
呆然として座り込んだままでいるエリスに、青年は近づいて手を差し伸べた。
「大丈夫? 怪我は?」
「だ、大丈夫です……」
青年は、エリスを引っ張り起こした。
「悪いね、剣は得意なんだ――それにしても、さっきの叫び声といい、線の細さといい、君は女の子みたいだな」
エリスはまたもや赤面し、恥ずかしさのあまり、うつむいたまま黙り込んでしまった。
そんなエリスの様子を見て青年は、
「気を悪くしてしまったかな。君の合格を心より願っているよ。また会おう、レディ」
とエリスに言い残し、講堂から出ていった。