バイトが忙しいから部活には入らない。

 ――という表向きな理由を早紀に伝えたその日から、ハンドボール同好会に勧誘してくる。中学の頃から運動部に入っていた早紀にはもってこいのスポーツだ。運動が苦手な私には苦痛でしかない。

 私だって部活はしたい。
 しかし、入ろうとしていた美術部は呆気なく門前払いされてしまった。

 放課後、美術部に入部届けを出したい旨を担任の先生に伝えると、途端に眉をひそめ「芸術コースがあるのになぜ選ばなかった?」「学科で用意されているのに、部活の一環で同じものがあるのはおかしい」と私に問い詰めるように説明した。

 職員室で尋ねたせいか、周りの先生も嫌そうな顔をしている。気まずい空気の中、担任の先生は美術部に入りたいなら、最初から芸術コースに入っていればいいと、繰り返し力説してくる。言い方が違うだけで、言っていることが同じだった。耳にタコができるかと思った。

「――だから、美術部は存在しない。わかったら他の部活に行きなさい」
「部活は強制ですか?」
「いや、浅野の場合はアルバイトもあるから強制とは言えないが、大学進学や就職の時に繋がるだろうし、同好会に入るのも良いんじゃないか?」
「……強制でなければ、入るつもりはありません。失礼します」

 逃げるようにして職員室から出ていく。どの先生も私を睨んだ。蔑むような、汚いものを見るような、冷たい視線だった。

 なぜそれほどまでに美術部の存在を毛嫌いしているのか、疑問に思った。芸術コースがあるくらいなのだから、部活としてあってもいいだろうに。
 活動内容が被っているというだけなら、校内のニュースや話題を取り上げる新聞部と、生徒会で校内新聞を月に一回のペースで発行している編集委員会だって、同じ活動をしているのだからどちらか一つに絞るべきだ。生徒会の管轄が優先されるのであれば、廃止されるのは新聞部の方だろうけど。

 それに先生たちの態度がどうしても気になる。あの反応だと美術部は存在しているけど、生徒を近付かせないようにしている。何か不祥事でもあったのだろうか。

 職員室を出てから教室に向かう中、それだけをずっと考えていると、突然トントン、と肩を軽く叩かれた。

「――ねぇ、美術部に興味あるの?」
「……え?」