それは衝撃を受けたというより、一目惚れに近い感情だったと思う。

 身体にビビビッと電流が走るような運命的な出会いではなかったけど、魅入ってしまうほど惹かれるものがそこにあった。

 空に高く飛び立つ飛行機、耳を塞ぎたくなるサイレン、モノの灼ける匂い。
 平和を願う少女の訴えに誰一人、見て見ぬふりを繰り返す惨状を許した世界。

 たった一枚のカンバスに描かれたその光景に、私は呑まれ、涙した。
 他の作品に目を向け、ろくに見ようともせず素通りしていった人々には、変わった人間だと思われてたかもしれない。
 共感されなくてもいい。私が絵に感動して涙を流した事実は変わらない。

 だから、存在しない美術部に惹かれたのかもしれない。

 あの日に感じた愛おしさも、寂しさも全部。

 私はきっと、忘れない。