「新宮センパイ、助けて!」
赤坂 ひなたは俺の背中にしがみついている。
心底、怖がっている様子だ。
「赤坂? どういう状況だ?」
「あ、あの……福間先輩が…」
言葉に詰まる。
まあラブホの前だしなぁ……。
皆まで言えずに頬を赤くしている。
ヤル気だったんじゃろか?
「おい! お前!」
顔面を真っ赤にさせて大柄の男が迫る。
彼の名は確か、福間 相馬。
赤坂 ひなたと同じく制服組の三ツ橋高校の生徒だ。
「お前、この前の一ツ橋のやつだろがっ!」
鬼の形相で俺の襟元を力強く引っ張る。
鼻息がかなり荒い。
まあ同じ男として気持ちはわからんでもない。
寸止めだもんなぁ……。
「福間だろ? 俺の名を忘れたか?」
彼の名前を口にするとイラついた様子で、尚も拳に力が入る。
「新宮とかいってたよな!? 赤坂を返せよ!」
返すって……。
「返すも何も俺は部外者だ。好きにすればいいだろ?」
THE・無責任。
「え……最低! 新宮センパイ!」
背中をバシバシと叩く赤坂。
「だって性行為を交渉中だったんだろ? 俺の出る幕じゃない。増してや、付き合っているのならば、当の本人同士で話し合って決めろ」
「付き合ってなんかいません!」
え? 付き合ってんじゃないの?
「そうなのか?」
「福間センパイが『部活帰りに映画を観ないか?』って誘われただけです!」
それってデートなのでは?
というか、こいつら……さっきチケット売り場にいたカップルじゃねーか。
「はぁ!? 赤坂! 俺と付き合ってくれるんじゃねーのかよ!?」
やっとのことで俺から手を離す福間。
今度は怒りの矛先が赤坂に向きつつある。
「付き合うなんていってません!」
「だって、学校で『俺と付き合ってくれ』って言ったら、『うん』っていたじゃねーか!?」
痴話げんかかよ。よそでやってくれ。
「付き合うって意味間違えてます! 『映画に付き合う』って意味でしょ!」
「……」
激しい言い合いから一転して静まり返る。
「ふざけんな! デートだろ、今日のは!?」
福間センパイ、かわいそう。
「違います! ただの映画鑑賞でしょ!」
あるある~ 男の勘違いってやつね。
「とりあえず、新宮から離れろ!」
俺から赤坂を無理やり引きずりだす福間。
「いやっ!」
俺は一連の騒動を静観したが、一つだけ気になったことがある。
福間 相馬。こいつはルーレット感覚で、俺が崇拝する世界のタケちゃんの作品を選んだこと。
それからこいつは赤坂と付き合いたいがために、『ヤクザレイジ』を観たことだ。
つまり映画なんてどうでもよかったんじゃないか?
ただの口実に過ぎず、目的といえば、赤坂をラブホにお土産できれば、それでミッションコンプリートだったのだろう……許せん!
「おい、福間!」
「んだよ! お前には関係ないだろ!」
「いや関係あるな、赤坂は渡せん」
俺は赤坂をかばうように福間との間を遮る。
「新宮センパイ! 嬉しい!」
なぜか満面の笑顔で俺の背中に身を寄せる赤坂。
「なんなんだよ!」
激昂する福間を無視して俺は話を続けた。
「福間……お前。さっき『ヤクザレイジ』観てたよな?」
拍子抜けした顔で、俺を見つめる福間。
「は? 観てたけど?」
「感想は?」
「なにいってんだ? そんなこと今はどうでもいいだろ? それに覚えてねーよ、あんなチンピラの映画!」
何かが俺の頭の中で弾けた。
「お前、今なんつった?」
「あ? チンピラ映画だろ?」
「福間……赤坂を置いて帰れ!」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ!?」
「何故かだと? お前は赤坂と性行為をしたいがために映画館に連れていき、ルーレット感覚でタケちゃんの映画を選び、そして『ヤクザレイジ』の感想も言えず、覚えていなかった……」
「「え?」」
ここだけは赤坂と福間の息ぴったり。
「許せないんだよ! タケちゃんの映画はそんなチープなもんじゃない!」
バシッと人差し指を突き付ける。
「……じゃあ、あれか? 俺と赤坂の恋路を邪魔するってんだな?」
「恋路って、私は福間センパイのことなんか、何とも思ってません!」
それ、一番言っちゃダメなやつ!
福間がプルプルしだしちゃったよ。
涙目で……。
「新宮! てめぇのせいだ!」
えぇ!? なんでそうなるの?
「何故だ? どちらにしろ、無理やり性行為に及ぶのは犯罪だぞ?」
俺がそう言うと、福間はうつむいて拳をつくって震えていた。
かなり怒っているようだ。
「犯罪だって……? 新宮、お前。初めて会ったときから生意気なんだよ。やっぱり一ツ橋の奴らは俺たち、三ツ橋高校の面汚しだ!」
「言わせておけば……」
俺が言葉で反撃しようとした瞬間だった。
「うるせぇなぁ! その口を塞いでやるよ!」
一瞬だった。
顔面目掛けてストレートパンチ。
映像がブツンッと消えるように、意識を失った。
赤坂 ひなたは俺の背中にしがみついている。
心底、怖がっている様子だ。
「赤坂? どういう状況だ?」
「あ、あの……福間先輩が…」
言葉に詰まる。
まあラブホの前だしなぁ……。
皆まで言えずに頬を赤くしている。
ヤル気だったんじゃろか?
「おい! お前!」
顔面を真っ赤にさせて大柄の男が迫る。
彼の名は確か、福間 相馬。
赤坂 ひなたと同じく制服組の三ツ橋高校の生徒だ。
「お前、この前の一ツ橋のやつだろがっ!」
鬼の形相で俺の襟元を力強く引っ張る。
鼻息がかなり荒い。
まあ同じ男として気持ちはわからんでもない。
寸止めだもんなぁ……。
「福間だろ? 俺の名を忘れたか?」
彼の名前を口にするとイラついた様子で、尚も拳に力が入る。
「新宮とかいってたよな!? 赤坂を返せよ!」
返すって……。
「返すも何も俺は部外者だ。好きにすればいいだろ?」
THE・無責任。
「え……最低! 新宮センパイ!」
背中をバシバシと叩く赤坂。
「だって性行為を交渉中だったんだろ? 俺の出る幕じゃない。増してや、付き合っているのならば、当の本人同士で話し合って決めろ」
「付き合ってなんかいません!」
え? 付き合ってんじゃないの?
「そうなのか?」
「福間センパイが『部活帰りに映画を観ないか?』って誘われただけです!」
それってデートなのでは?
というか、こいつら……さっきチケット売り場にいたカップルじゃねーか。
「はぁ!? 赤坂! 俺と付き合ってくれるんじゃねーのかよ!?」
やっとのことで俺から手を離す福間。
今度は怒りの矛先が赤坂に向きつつある。
「付き合うなんていってません!」
「だって、学校で『俺と付き合ってくれ』って言ったら、『うん』っていたじゃねーか!?」
痴話げんかかよ。よそでやってくれ。
「付き合うって意味間違えてます! 『映画に付き合う』って意味でしょ!」
「……」
激しい言い合いから一転して静まり返る。
「ふざけんな! デートだろ、今日のは!?」
福間センパイ、かわいそう。
「違います! ただの映画鑑賞でしょ!」
あるある~ 男の勘違いってやつね。
「とりあえず、新宮から離れろ!」
俺から赤坂を無理やり引きずりだす福間。
「いやっ!」
俺は一連の騒動を静観したが、一つだけ気になったことがある。
福間 相馬。こいつはルーレット感覚で、俺が崇拝する世界のタケちゃんの作品を選んだこと。
それからこいつは赤坂と付き合いたいがために、『ヤクザレイジ』を観たことだ。
つまり映画なんてどうでもよかったんじゃないか?
ただの口実に過ぎず、目的といえば、赤坂をラブホにお土産できれば、それでミッションコンプリートだったのだろう……許せん!
「おい、福間!」
「んだよ! お前には関係ないだろ!」
「いや関係あるな、赤坂は渡せん」
俺は赤坂をかばうように福間との間を遮る。
「新宮センパイ! 嬉しい!」
なぜか満面の笑顔で俺の背中に身を寄せる赤坂。
「なんなんだよ!」
激昂する福間を無視して俺は話を続けた。
「福間……お前。さっき『ヤクザレイジ』観てたよな?」
拍子抜けした顔で、俺を見つめる福間。
「は? 観てたけど?」
「感想は?」
「なにいってんだ? そんなこと今はどうでもいいだろ? それに覚えてねーよ、あんなチンピラの映画!」
何かが俺の頭の中で弾けた。
「お前、今なんつった?」
「あ? チンピラ映画だろ?」
「福間……赤坂を置いて帰れ!」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ!?」
「何故かだと? お前は赤坂と性行為をしたいがために映画館に連れていき、ルーレット感覚でタケちゃんの映画を選び、そして『ヤクザレイジ』の感想も言えず、覚えていなかった……」
「「え?」」
ここだけは赤坂と福間の息ぴったり。
「許せないんだよ! タケちゃんの映画はそんなチープなもんじゃない!」
バシッと人差し指を突き付ける。
「……じゃあ、あれか? 俺と赤坂の恋路を邪魔するってんだな?」
「恋路って、私は福間センパイのことなんか、何とも思ってません!」
それ、一番言っちゃダメなやつ!
福間がプルプルしだしちゃったよ。
涙目で……。
「新宮! てめぇのせいだ!」
えぇ!? なんでそうなるの?
「何故だ? どちらにしろ、無理やり性行為に及ぶのは犯罪だぞ?」
俺がそう言うと、福間はうつむいて拳をつくって震えていた。
かなり怒っているようだ。
「犯罪だって……? 新宮、お前。初めて会ったときから生意気なんだよ。やっぱり一ツ橋の奴らは俺たち、三ツ橋高校の面汚しだ!」
「言わせておけば……」
俺が言葉で反撃しようとした瞬間だった。
「うるせぇなぁ! その口を塞いでやるよ!」
一瞬だった。
顔面目掛けてストレートパンチ。
映像がブツンッと消えるように、意識を失った。