あれから二週間後。
 忌々しき『クソ女』と出会うこととなった。

 俺は天神に来ていた。
 福岡県福岡市における繁華街、中心部とも言える天神。
 天神なぞコミュ力、十九の俺には無縁の地だ。
 だってリア充の街だからな。

 指示された場所に辿りつくまでに一時間もかかった。
 母さんから借りた地図を見ながら、同じ場所をグルグルと周り、右へ左へ……「あれ? さっきと同じでは?」が何度も続き、やっとのことだ。

 天神はたくさんのビルで連なっているが、目の前のビルは一際目立つ。
 ビルの壁一面が銀色に塗装されており、鏡のように日光が反射し、下にいる俺はそれを直で食らっている。
「悪魔城……」

 そう呟くと、自動ドアが開く。
 すぐに目に入ったのは白い半円形の机、の上に花瓶。
 後ろには、これまた白い制服をきた受付のお姉さんがいた。

「こんにちは、本日はアポを取られていますか?」
「アポなら勝手に強引に取られました。それよりも白金とかいうアホな女いますか?」

 お姉さんは引きつった顔で「ア、アホ? し、白金ですね。少々お待ちください……」
 アホで通ったぞ。やはり社内でもそういう認識なのだろうな。

「クソ。なんで、この俺が……」
 俺はわざと聞こえるような舌打ちをした。
 それを聞いた受付のお姉さんはあたふたしている。

 別に俺の顔は特段、悪役面ではない。
 性格が若者にしては落ち着きすぎて、その表情は女子曰く「十〇代に見えない~♪ ウケる~♪」
 何がウケるんだ? 俺は顔芸などしていない。

 だから、普段から黙っていると「何を考えているわからない」「不審者」しまいには「キモい、死んで」と女子に言われる始末だ。
 なので、俺がイラつき沈黙さえすれば、その独特なオーラを受けた相手はキョドッてしまうらしい。   
 キモいのだよ、きっと。
 特に独身の若い女に、こうかはばつぐんだ!

 しばらく待っていると……。
「おっ待たせしました~」
 と、ピンク地に白いドッド柄のワンピースを着たツインテールのロリッ娘が現れた。

「誰だ、お前」
「え?」
 そう、これがクソ担当編集、白金 日葵との初めて出会った忌々しき日であった。