あの後、僕と如月千草は、二つの神社を回った。
 一つ目の神社は、「石野宮神社」と言って、如月千草が言うには、石の神が祀られているところだった。急な坂を登ったところに艶やかに研磨された鳥居を潜り、空が透けるくらいに磨かれた石畳を進んだ場所に本殿がある。本殿の前に置かれた賽銭箱も石でできていて、空の光を反射して重厚に光っていた。
 お参りを済ませると、そのまま神社を外れたところにある山道を通って、パワースポットに向かおうとしたのだが、邪気を察知した神主さんに見つかってしまった。
 案の定、そこの神主と如月千草は知り合いだった。
 二人は、「千草さんじゃありませんか! どうしたんですか?」「いやあ、この男の子の背後にいる奴をなんとかしようと思って」「ほう、それは素晴らしい心がけですね。御父様を喜びますよ」と、テンプレのような会話をしていた。会話がひと段落すると、僕たちは神主さんに案内されて、パワースポットに向かった。
 そこには、大きな岩があった。伝承によると、この山に住み着く神様が、崖を削ってここに運んできたものらしい。岩には、神様の霊力が宿っているので、これを削って、お守り代わりに持っておく人が多いという。
 僕は神主さんからノミを借りて岩を叩くと、岩はゴルフボールくらいの大きさにころっと割れた。神主さんは、「これを肌身離さず持っておきなさい」と言って、首に掛けれる麻布の袋をくれた。それに削れた岩を入れて、首に掛けた。
 次に向かったのは、「宵之神社」。色々すごい神様が祀られているらしい。とにかく急な階段を登って…、お参りをして…、で、僕の邪気を察知した神主さんに見つかって…、如月千草と知り合いで…、後のことはもうデジャブのようだった。
 三つの神社で、お守り、護符、霊水、霊石を手に入れた僕たちは、そのままの足で、彼女が予約した旅館へと向かった。

 そして、今に至る。