涙でグシャグシャな顔だけど、それでも母さんは笑顔のままだった。


「悠真はね、『一つに決められないよ。だって全部大好きだから』って答えてくれたの。それが本当に嬉しかった。だから、自然と斗真の好物ばかり並んでしまう事が多かったのよ。斗真の好物だけど悠真も喜んで食べてくれるからって思って」


そう……だったのか。

言われてみれば、そんな事もあったような気がする。


「中学に上がって、悠真の様子がおかしい事には何となく気が付いていたの。でも、あなたは昔から心配をかけたくないという思いからか、話をしてくれる雰囲気じゃなかったから、悠真から話してくれるまでそっとしておこうって。……でも、間違いだったって、白石さんに初めて言われて気が付いた。話してくれるまで待つんじゃなくて、こっちから聞くべきだったのよね。本当にごめんなさい」


母さんの声は震えていた。


「そんな矢先に斗真が事故で亡くなって、どうしたらいいかわからなくなった。言い訳になってしまうが無関心だったわけじゃない。悠真とどう向き合えばいいのかわからなかったんだ。親失格だと罵られてもおかしくない。本当に申し訳なかった」


父さんが僕に頭を下げる。

僕が背を向けていたから、二人とも僕とどう向き合えばいいのかわからなかった。

勝手に人のせいにして、被害者面して……。

全部僕がいけなかったのに。