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 と、萩上千鶴の世話をするときの注意事項が、A四のプリント十数枚にわたってびっしりと書き連ねられていた。
 まるで、お姫様だ。
 僕は説明書の一番後ろを捲り、萩上の千鶴が暮らしているアパートの住所を確かめた。思ったよりも距離は離れておらず、バイクに乗れば十分以内に辿り着けるだろう。まあ、ここ最近バイクなんて乗っていないから、アパートの駐輪場で埃塗れになっていたけど。
 バスも使えないことは無かったが、この田舎では本数も少ない。次の便を待っているだけで、僕のアパートと萩上のアパートを二、三回往復する自信があった。
 ということで、僕は炎天下の中、Tシャツから伸びた白い腕を焼きながら歩くことにした。