「僕は何もできないただの子供です。でも、理不尽な苦痛はこの世界からなくしたい、その想いの強さだけは負けません。そして、この想いに賛同してくれた仲間たち、彼らが僕に力をくれました。そして今日、こんなにたくさんの皆さんを迎え、一人の子供の思い付きが現実の国となり、大いなる一歩を踏み出すことができました!」

 パチパチパチ!
 住民は拍手で応える。

 レオは観客席を見回し、大きく息をつくと、ピンと右手を高く掲げ、
「今日、ここに、アレグリス共和国建国を宣言します!」
 と叫んだ。

 ワァァァァ!
 上がる大歓声。そして上空で花火がポン! ポン! と破裂する。

 レオは思わず涙をポロリとこぼした。物心ついた頃にはもう朝から晩まで労働を強いられ、理不尽な暴力におびえていた日々を思い出したのだ。自分だけじゃない、道端に餓死した浮浪児が転がされていたのは何度も見た。人権のない社会、それはもう終わりにしなければならない。そしてこれが解決への大いなる一歩なのだと感慨を新たにした。

 建国の式典は無事終わり、その後、各部門の担当者から業務内容の紹介と人材募集のプレゼンが行われていった。









4-2. 告げられた真名

 控室にレオが戻ってくると、シアンは満面の笑みでレオに駆け寄ってハグをした。
「よくできました。カッコよかったよ」
「ありがとう、シアンのおかげだよ」
 レオもうれしそうにシアンを抱きしめた。
 二人はしばらくいろいろな出来事を思い出しながら、お互いの体温を感じていた。

 すると、シアンはそっと離れ、
「賭けは君の勝ちだ。もう僕の役割も終わりだよ」
 そう言ってちょっと寂しそうに微笑んだ。
「えっ……? まだ……、まだだよ。まだ人が来ただけじゃないか!」
 レオは終わりを告げるシアンに、不安を覚えて叫ぶ。
 シアンはゆっくりと首を振ると、
「僕を待ってる星は百万個もあるんだ……」
 そう言って目をつぶった。
「いやだよぉ!」
 レオはシアンに抱き着いた。
 シアンは愛おしそうにレオの頭をなでると、レヴィアの方を向いて、
「後は任せたよ」
 と、静かに言う。
 レヴィアは胸に手を当て、
「かしこまりました」
 と、言ってうやうやしく頭を下げた。
「えっ! やだやだ! いかないで――――!」
「楽しかったよ。またいつか……、会えるといいね……」