長時間並ぶことになっても移民希望者は誰も文句を言わなかった。それだけアレグリスへの希望は大きかったのだ。
 倉庫の入り口を入ると、二十人くらいごとにまとめられてプロジェクターでアレグリスの情報の動画が流される。まず、レオがあいさつし、街の様子、入居するタワマンの部屋、配られるスマホの使い方、学校のシステムが案内される。
 この動画が流される度に歓喜の声が上がり、中には涙を流す者もいた。
 それが終わると宣誓の部屋に通される。そこではウソ発見器に向かって、犯罪は起こさないこと、国の発展に協力する事を誓ってもらう。予想に反してほとんどの人が無事通過していった。
 次に生体情報を登録してもらい、スマホが渡される。お金のやり取りの仕方、国からの広報の受け取り方を覚えてもらう。
 最後にタワマンの部屋割りを行う。スラムの地域ごとに近い場所になるように、不平等にならないようにヒアリングを行いながら部屋を割り当てていく。
 これが終わると空間接続のドアをくぐってアレグリスへの入国となる。

 初めてアレグリスの街を見た者は全員、タワマンを見上げ、その先進的な街の姿に驚き、しばらく言葉を失う。動画では見ていたものの、実際にその姿を見るとその威容に圧倒されてしまうのだ。
 レオはそう言う人たちに声をかけていく。中にはレオの手を握りしめ、泣き出してしまう者までいた。
 そのうちにレオは移民たちに囲まれ、胴上げが始まってしまう。
「国王陛下、バンザーイ!」「バンザーイ!」「バンザーイ!」
 街に響き渡る万歳の声に合わせ、レオは空高く舞った。
 澄み渡る宮崎の空に高く高く、大きく手を広げ、レオは理想が形になっていく実感に浸りながら何度も舞った。
 星の命運をかけた賭けにレオはまさに勝ちつつあったのだった。

 初日は予定時間を大きく超え、五千人を超える移民を受け入れることができた。













4章 王国のもたらす光と影
4-1. 建国宣言

 それから一カ月、住民は二万人を超え、スラムからだけじゃなく、平民も参加してくれるようになった。特に手に職を持った職人が、アレグリスの先進的な工業にひかれてやってくるケースが出てくるようになり、国としての安定感が出始めてきた。

 そして今日はアレグリスの設立記念式典の日だ。
 スタジアムに全国民を集め、レオが建国を宣言する。