移民受け入れ所の奥の広間で、レオは木箱の上に乗ってみんなの前に立った。
 約五十人のスタッフが雑談をやめ、一斉にレオの方を向く。

「大将! たのんます!」
 ヴィクトーが太い声をあげた。

 レオはみんなを見回し……、とてもうれしそうにニコッと笑った。
「みんなありがとう……。言おうとしたこと、いっぱいあったんですが、全部忘れちゃいました……」
 そう言ってちょっと目を潤ませて下を向いた。
「レオ! 頑張って!」
 オディーヌが優しく掛け声をかける。
 レオは大きく息をついて、しっかりとした目でみんなを見回して力強く言った。
「言いたいことはただ一つ……。貧困や奴隷のない国を作りましょう! 人が人を虐げるような世界はもうやめましょう! みんなで理想の国を作りましょう!」
 レオは小さなこぶしをグッと握って見せた。
 パチパチパチ!
 湧き上がる拍手。
「レオちゃーん!」
 若い女の子が数人声を合わせて掛け声をかけ、レオは赤くなり、あちこちで笑い声が上がる。
「お前ら! 国王陛下に失礼だぞ!」
 ヴィクトーは怒るが、みんな楽しそうに浮かれていて誰も言う事を聞かない。
 待ちに待った移民開始の日、それはスタッフのみんなにとっても待ちに待った日だったのだ。
「では、端末のチェックスタートしまーす!」
 零が声をかけ、担当のスタッフが移動していく。
「レオ様すみません、私の指導が行き届かなくて……」
 ヴィクトーはレオに謝った。
「いやいや、嫌われるよりいいですよ」
 そう照れながら答えた。
「ああいう子がいいの?」
 オディーヌが真顔で聞く。
「えっ? いいとか悪いとかないよ……」
 困惑するレオを見て、レヴィアは言った。
「大丈夫、オディーヌが一番じゃろ?」
 するとレオは真っ赤になってうつむき、小さくうなずいた。
「わ、私はそんなこと聞きたかったんじゃないのよ」
 赤くなって焦るオディーヌ。
「ははは、若いってええのう」
 レヴィアはうれしそうに笑った。

     ◇

 移民の受付が始まると、倉庫の前には長蛇の列ができた。数千人の人たちが押し寄せたのだ。衣食住完備、それは日々の食べ物にも困ってきたスラムの人たちにはまさに理想郷だった。

「最後尾はこちらでーす!」
 プラカードを持った女の子が長蛇の列の後ろで声を張り上げる。