それでも零は、この世界の真実に触れられたことに感動し、スクッと立ち上がると、
「わたくし、零は今! モーレツに感動しております!! この素敵な出会いにカンパーイ!」
 と、勢いよくジョッキを掲げた。
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「イエーイ!」「よろしくぅ!」
 ジョッキのビールをゴクゴクと飲み干しながら、零は今までの悩みが全て吹っ飛んでいくような爽快感に浸っていた。今ここに見えている世界は幻想にすぎず、異世界は無数にあり、今、そこへのアクセスを手に入れたのだ。それは零の世界観をひっくり返すコペルニクス的転回だった。










3-17. 新人絶好調

 乾杯を繰り返し、ラストオーダーの頃には零はグデングデンに酔っぱらっていた。
「シアンの(あね)さん! 僕、分かっちゃいましたよ! 姐さんがこの宇宙を作ったんだ!」
「ブブー!」
「ウソだぁ! 姐さん全部わかってるし、無敵じゃないですか!」
「惜しいけど違うんだな。きゃははは!」
 シアンも気持ちよさそうに真っ赤な顔で笑った。
「零、大丈夫?」
 ジュースしか飲んでないレオが心配そうに聞く。
「これはこれは国王陛下! 陛下は偉大だ! その若さでなぜこんな大宇宙の要人に一目置かれるのだぁ!」
 店内で叫ぶ零。
「お水貰いましょうか?」
 オディーヌが心配そうに声をかける。
「これは王女様! なぜ王女様はそんなに美しいのですか? もうドキドキしっぱなしですよ!」
 ナチュラルに口説き始める零。
「お主、そのくらいにしておけ」
 そう言ってレヴィアは水を出して零に勧める。
 零は受け取った水を一気にゴクゴクと飲み干した。
 そして、レヴィアをジッと見る。
「な、なんじゃ? ほれちゃダメじゃぞ」
「レヴィア様! 見た目女子中学生みたいなのに、その存在感、何か秘めてますよね? 偉大な匂いがします!」
「おぉ、お主! 見る目あるのう! よし! 飲もう! カンパーイ!」
 そう言って二人はまたジョッキをぶつけ、一気に空けた。
「くはーっ! 美味い!」
 零はそう言って焦点のあわない目で幸せそうに微笑む。
 レオとオディーヌは目を見合わせ、お互い渋い表情で首をかしげた。

 翌日、オディーヌのところには記憶を失った零から謝罪のメールが届いていた。

       ◇